第17話

今日こそ、仕事を早く終わらせる。



先程、書類を渡しがてら、渡にポストイットで今日のデートの約束を取り付けた。



いつも、決まってデートは自分が遅刻してしまっていた。


しかし今日こそはと、前々日から残業して仕事の調整を掛けていたのだ。



オフィスで一人、俺はもうスピードで作業に没頭し、PM8:00には粗方目処がついた。



ふー。



パソコンの電源をオフしようとした時、「誠さんっ」と後ろから声を掛けられた。


振り替える前に誰だかわかった。少し前迄聞き覚えのある、懐かしい声だった。


「裕太…。」



渡との約束の時間が過ぎてる。急いで帰り支度を進め、「俺、この間も言ったけど、未練ないから。じゃあ。」とオフィスを後にしようとしながら、裕太に声を掛けて歩き出した。



「待って下さい、誠さん。話だけ、話だけ聞いてください。俺が悪かったんです。あの時構ってくれなかったからって、責任転嫁みたいな言い方して、本当ごめんなさい。すみませんでした。一言謝りたくて。」裕太は本当に申し訳なさそうに言った。



「いいよ、俺も悪かったし、言い過ぎたよ。」



「…今、付き合ってる人いるんですか?」裕太は少し寂しそうに聞いてきた。



少し返答に迷ったが「ああ、いるよ。」と、少し小さな声で言った。



「そうか、誠さん、モテるから。…でも、相手に遠慮して優しすぎる所があるから。…そうか、うん。僕とは上手くいかなかったけど、今度の人とは上手く行くといいですね。」裕太は穏やかな顔をしていた。




「ありがとう。」そう俺は裕太に言い残してと、急いで会社を後にした。







「ピロンっ」



後数分で約束のバーに着こうかという時、携帯が鳴った。



開くと渡からだった。



「今日はもう遅いんでまたの機会にお願いします。お仕事頑張ってください。」



はぁー、ため息がでた。



「もう少しで着くんだけど待って…」と途中迄打ったのを削除して、「わかった、また今度。」と送信した。



はぁー、なにやってんだろ俺は。


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