第11話

会社から15分程歩いた所にある、おでん屋に俺達二人は来ていた。


店員さんが、注文を取りにテーブルに来た。



「えっと俺は、ビールと枝豆と大根と玉子。お前は?」


「俺は、とりあえず、ビールと大根三個で。」


「ははは。いちいち面白いな、高槻は。」


「えー、だって大根美味しいじゃないですかー」




ビールが届いて、乾杯して、まったり飲み始めた。



純名さん、酒入っても全然変わんないなー。俺なんかただの飲みたがりだから、中ジョッキ一杯で結構なほろ酔い具合だ。



「純名主任て、やっぱイケメンですよね、この距離で拝むと照れます。」


「そう?外見褒められてもなー。内面を評価してよ、内面を。」


「内面は…どうだろう、あ、でも、恋人泣かしてたじゃないですかぁー。ジャッチしかねますね。」



「泣かしたって…向こう側が勝手に浮気したんだよ。それで別れようって言ったら、逆ギレならぬ、逆泣きだったの。」



「え?そうなの?…俺てっきり、あのシュチュエーションだと、純名さんが飽きて、ぽいっと容赦なく捨てる場面だと思ってましたよ。」



「俺がそんなことするかよ、随分だな。仕事が立て込んでて、会えなかったんだよ、暫く。で、ちょっと構ってやれなかったらあのざまよ。」





え!?そうなの?なんだ!なんだ!そうだったのか。純名さん、全然悪くないじゃん。




なんか目の前にいる純名さんがさっきより100倍格好良く見えてきた。



俺、今日はやっぱり酔いの回りが早いな。そうか、寝不足だったしな。




俺は酔いに任せて、心の中の声をそのまま晒していた。





「なんか、純名さん、さっきより、100倍格好よく見えます。」



「!?ーーーはははっ。なんだ、高槻、大人をからかうんじゃない。お前ノンケだろ?」



「からかってないです。」




少し、沈黙があった。




「じゃあ、なに、交換条件これにする?」





え?どういう意味?




純名さんいわく、自分も失恋したてだから、次の恋にノンケさんとは前向きに踏み出す勇気がないと。俺も男と付き合うのは初めてだから、だから、俺らは条件付き恋愛が丁度いい、というのだ。






そうだけど、そうだけどーー、俺はちゃんと付き合いたいな、だって、だって、初めて付き合う人だから。



こんな事、恥ずかしくて純名さんには言えなかった。


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