第40話
「ナイト、アカツキ! すぐ戻るけど、とりあえずただいま!」
「ワン!」
「フゴ」
食事を終えた後、俺は人気のない場所に移動して転移魔法を使用し、家に戻っていた。
また向こうに戻るときは気をつけなきゃいけないが、まずはナイトたちのご飯だな。
向こうでも料理したのだが、戻ってきてもナイトたちの食事を用意するために料理を開始する。もちろんサバイバルではないのでちゃんとした食材を使って料理してますけどね。
異世界産の食材も使って完成した料理を出すと、二匹とも美味しそうに食べてくれた。
「どうだ? 美味しいか?」
「わふ!」
「ブヒ!」
「そうか」
……楓たちにも美味しそうに食べてもらえて嬉しかったように、俺は人に料理を作ったりして喜んでもらうのが好きなようだ。
まあ誰もが人に嫌われるのは嫌だろうし、俺だけの感性じゃないだろうけどね。
「よし、それじゃあ俺はまた戻るな。二人とも、いい子にしててね」
「わふ!」
「ブヒ!」
元気のいい二匹の返事を聞き、俺はそれぞれを撫でると慎重にキャンプ場に戻るのだった。
キャンプ場に戻ると、どうやらお風呂の時間のようで、俺たちは巨大な旅館に向かった。
「それじゃあ、また後でね~」
楓たちと別れて俺たちも男湯に移動すると、すでに多くの男子生徒が入っていた。
体力的には問題ないとはいえ、お風呂に入ってゆっくりしたい気持ちはあるので俺たちも急いで服を脱ぐのだが……。
「……ねえ、なんでそんなに見てくるの?」
何故か周囲の男子生徒が俺の方を見て固まっていた。
「い、いや……優夜の体がとんでもなかったからさ……」
俺の問いかけに、晶は聞きようによっては危ない発言で答えた。
そんな晶の回答に周囲の男子たちも勢いよく首を縦に振る。
「そ、そんなにいうほどかな?」
「いやいや、いうほどだよ! 何!? その腹筋! てか全体的な筋肉量! それで帰宅部とか信じられないよ!?」
異世界で鍛えてるからね。絶対に言えないし信じてもらえないだろうけど。
異世界でレベル上げしてるだけじゃなく、効果があるかは分からないけど筋トレもやってるしね。
でも本当に前とは見違えるほど体は引き締まったよなぁ……。
「マジで、アイツヤバいな……」
「イケメンでスタイルもいいとか俺たちはどうりゃいいんだよ……」
「てか筋肉もそうだが……」
『アソコがデカい……!』
「どこ見てる!?」
男子たちの視線が俺の股間に向けられてることに気づいて俺はすぐにタオルで隠した。
そんなやりとりがありながらも何とか風呂に入る。
「おお、広い……!」
「お金のある学校ってだけあって、こういうところは流石だなぁ……そんな学校で僕たちはサバイバルをしてるんだけどね」
「ははは……」
晶の言葉に俺は苦笑いを浮かべた。
でも浴場は本当に広く、俺たち男子生徒全員が一斉に使えるだけのシャワーがついているし、内湯は広く、ジャグジーから電気風呂、サウナまで完備していた。本当にただの旅館じゃん。
体を洗うためにシャワーに移動すると、そこには亮と慎吾君の姿があった。
「お、優夜!」
「き、今日初めてしゃべるね」
「亮に慎吾君!」
「やあ、そっちはどんな感じだい?」
晶の言葉に亮たちは苦笑する。
「いやあ、キャンプはしたことあっても、食材までは現地調達とかないから、色々大変だわ」
「り、料理は僕も亮君もできるし、問題ないんだけどね。ただ、普通に大変だよ」
どうやら亮たちはそれなりに苦労したようだ。
まあ俺は『鑑別』っていう一種のズルだけでなく、レベルアップした超人的な肉体のおかげで苦労してないんだけどね。
「そう言えば聞いたぜ? 優夜、お前手で魚捕まえたんだろ?」
「ま、まあね」
「他にも料理がとても美味しかったって話も聞いたよ?」
「ははははは……」
うん、予想以上にやりすぎたかもしれない。
でもそうしないと美味しいごはんが食べられなかったんだ。許してほしい。
亮たちの言葉に思わず曖昧な笑みを浮かべていると、晶が重く頷いた。
「ああ……優夜君の料理は最高だった……僕は初めて料理の神を見たかもしれない……」
「お、おお? そこまで美味かったのか……てか、前の体育の時もそうだったけど、やっぱり優夜はスゲェな! こうして体も見ると本当に帰宅部って感じじゃねぇしよ。ただボクサーとか空手家とか、格闘技系の体って感じだな」
「り、亮君も大概だけどね」
慎吾君の言葉に俺は頷きながらも、亮の観察眼に内心驚いていた。
確かに俺の体はスポーツって言うよりは戦いに特化しているはずだ。なんせ魔物と殺し合いしてるワケだし。
それを体を見ただけで見抜くなんて……それとも他の人も分かるもんなのかな?
改めて亮のすごさを実感しながらも、俺たちはお互いの情報交換なんかをしながらシャワーを浴びおえると、お待ちかねのお風呂に入る。
「なあ、やっぱりこういうところに来たんだから露天風呂に行かねぇか?」
「うん、いいよ」
亮の提案の元、俺たちは露天風呂に向かう。
「うおっ! 大きいなぁ!」
亮の言う通り、露天風呂はとても広く、大きかった。
夜空には星が輝いていて、異世界とは違った趣だった。
「あー……気持ちいいなぁ……」
お風呂に入ると思わず出ちゃう声でそういうと、亮たちも同意する。
「でも明日は何するんだろ?」
「さあ? ただ今日と同じで山とか川で食材捕って来なきゃいけないだろうけど……」
「僕はもう熊の囮は嫌だからね!」
「あ、晶君に何があったんだい……?」
実際、明日は何するんだろう……。
明日の予定も気になるが、今はそれぞれが今日の疲れを癒すため、ここで話を切り上げる。
そしてゆったりとした雰囲気のまま、温泉を楽しむのだった。
***
「気持ちいいねぇ」
「そうだね~」
優夜たちが男子風呂で寛いでいるなか、女子風呂では楓たちがゆっくりとお風呂を堪能していた。
「キャンプだー! ってくらいの気持ちで来たから、まさかサバイバルみたいなことをさせられて本当に驚いたよー」
「本当にね……でも、明日も同じ形式で食事を用意しなきゃいけないわけでしょ?」
「うっ……そうだった……」
凛の言葉に楓が言葉を詰まらせると、周囲の女子も話に加わって来た。
「えー! でも楓たちはいいじゃん! あの【王子】と一緒だよ?」
「そうそう! うちの学校に来て早々、全校生徒の噂の的になったくらいなんだから」
「しかも超有名雑誌の『CutieBeauty』に、人気急上昇中の美羽ちゃんと並んで写ってたし!」
その話題の内容は優夜の話で、彼女たちは女子生徒特有の姦しさで盛り上がっていた。
「今日の話も聞いたけど、【王子】手づかみで魚捕まえたんでしょ? それに料理もすごい美味しかったって聞いたよ?」
「うん! すごく美味しかった~」
『いいなぁ!』
うっとりとした様子で語る楓に、周囲の女子生徒たちは羨望の声をあげた。
「でもさ、実際ウチの学校って男子のレベル高いよね?」
「あ、それ超思った! 亮君もカッコイイし、晶君だって……うん、黙ってればカッコいいしね!」
「でも私は亮君の隣にいる慎吾君かなぁ。彼、小動物っぽくて可愛いのよ!」
「中学の時は横暴な男子が多かったけど、この学園の男子は基本優しいしねぇ」
「そういう意味では生徒会もレベル高いよね? 生徒会長さんは美人だし、会員たちも美男美女の集団だし!」
「なんだか漫画の中の住人になった気分よね~」
「それを言ったら……楓!」
「うひゃあ!?」
突然一人の女子生徒に楓は胸を揉まれた。
「アンタのおっぱいも、漫画みたいに大きいわよね~」
「ちょっ、ちょっとぉ!」
「こんな胸で陸上部とか……アンタ男子生徒を殺す気?」
「何で!?」
「あー……確かに。アンタの胸は殺人級かもね」
「凛ちゃんまで!?」
優夜たちとはまた違った雰囲気で、彼女たちはそれぞれが学園の事、男子生徒たちの事、明日のことなど女子会のような雰囲気で語っていき、ゆったりとした時間を過ごす事が出来るのだった。
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