第27話
「ただいまー……」
「ワンッ!」
家に帰ると、待ってました! と言わんばかりにナイトが俺の胸に飛び込んできた。
それを慌てて受け止めると、俺はそのままナイトを撫でる。
「ごめんな? お留守番させて。これからもこんな感じになっちゃうけど……」
「くぅん」
俺が申し訳なく思いながらそういうと、ナイトは優しく俺の胸に頬ずりをしてきた。可愛い。
「……あ、そうだ! ナイト、さっきナイトのための首輪とかを買ってきたんだ!」
「わふ?」
『王星学園』に通うと決めた後、俺は司さんに近くにペットショップがないか訊いたのだ。
その結果、いいペットショップを教えてもらったので、そこで首輪やらリードやら必要そうなものを手に入れていた。
それらを買った後、無事に特売の卵も入手したので満足だ。
「家の中はしなくてもいいけど、ナイトを外に連れて行くときはこの首輪をしないといけないんだ。いいかい?」
「ワン!」
「……ありがとう」
ナイトは気持ちのいい返事をしてくれ、自分から首を差し出してきた。
今さらだけど、ナイトは本当に賢いな。俺より賢いんじゃない?
それはともかく、ナイトのために買った首輪は、ナイトの黒い毛に映えるようにと白色の首輪を買ったのだ。
実際につけてみるとよく似合っているので俺はホッとする。
「よかった……どうだ? 苦しくないか?」
「わふ……ワンッ!」
ナイトは首輪をつけた状態で少し動き回って確認すると、最後に頷きながら吠えた。
「よし! それじゃあ……どうだ? 外、行ってみるか?」
「わふ? ワン!」
首輪とリードを買ったからにはナイトと一緒に散歩をしたい。
そう思って誘ってみるとナイトは元気よく返事をしてくれた。
その返事を聞いて、俺は自然と笑顔になる。
「分かった。じゃあ用意をするから待っててね」
「ワン!」
俺は買った物を冷蔵庫などに仕舞いながら散歩の用意をする。
ナイトのことだから外で無暗にトイレとかしないだろうが、それでもエチケットというかマナーというか……スコップと軍手、そしてビニール袋を持って玄関に向かった。
「準備もできたし、行こうか!」
「わふ!」
こうして俺たちは外に飛び出した。
***
「ワン! ワン!」
「こら、ナイト。あんまりはしゃぐと危ないぞー」
初めての地球ということもあって、ナイトは車とかに怯えるんじゃないかと思ったが、それは杞憂だった。
ナイトは地球にある色々なモノに目を輝かせては、好奇心を爆発させていた。
でもそこは賢いナイトなだけあって、無暗に突撃したりせず、きちんと俺の方を確認して来たりしている。可愛い。可愛いしか言ってねぇけど、可愛い。
それにしても……時間的に人通りが少ないと思っていたのだが、ジョギングをしている人や俺と同じように犬の散歩をしている人がたくさんいた。
まあ今まで俺は真っ直ぐ家に帰ればよほどのことがない限り家から出なかったし、外のことなんてそんなに知らなかったんだけどさ。
それはともかく、やはり俺のナイトがとても可愛いのかすれ違う人たち全員が俺たちを見つめてきた。可愛いだろう? 俺もそう思う。
今までは蔑むような視線しか向けられなかったのに……凄い進歩だ。
俺は穏やかな気持ちですれ違う人々に挨拶をした。
「こんばんは」
「え!? あ、こっこんばんは!」
うん、挨拶を返してくれるってのは気持ちがいいね。……いきなり挨拶して変な人って思われてないよな? 信じてるからね?
こうして一通り散歩を楽しんだ俺たちは、家に帰った。
家に帰ると、俺はふと思いついたことをナイトに言う。
「そうだ。夕飯を食べたら、食後の運動がてら異世界を散歩しようか?」
「ワン!」
ナイトからすればこの地球が異世界なのだが、それは置いておこう。
それはともかく、以前グレイドたちがこの森を訪れたこともあって、次に俺の下まで来やすいように少しでも森の出口までの魔物の数を減らしておこうかと思ったのだ。
散歩っていうにはだいぶ物騒だし、俺たちが魔物を倒したとしてもそう簡単に数が減るとは思わない。
でも地道に続けていけば何か変わるかもしれないのでこれからは毎日続けていこうと思っている。体力もバカみたいに増えたわけだしな。
何より俺の戦闘経験が積めるっていうのは大きいだろう。
この世界でこの場所がどれくらい危険かは知らないけど、力を身に着けておいて損はないはずだ。それだけこの世界で安全に過ごせるようになるわけだしな。
今後の方針を少し決めた俺は、宣言通り夕飯を済ませて、ナイトと一緒に森の散歩という名の戦闘訓練をしていくのだった。
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