第18話
「さて、ドロップアイテムは……」
デビルベアーを倒したことで手に入ったドロップアイテムの素材っぽいヤツを確認する。
『
『悪熊の肉』……デビルベアーの肉。肉は焼くと硬くなるが、煮込むと非常に柔らかい。
『悪熊の血液』……デビルベアーの血液。魔道具のアイテムとして使用される場合もあるが、そのまま飲むこともできる。味はサッパリしており、鉄臭さなどは一切なく、スープの出汁などに使われることも。飲めば炎に対する耐性を獲得できる。
「おい、血液って……」
手に入ったドロップアイテムは、ゴワゴワした大きい赤い毛皮に、謎の草に包まれた大量の肉、そして大き目のビンに詰められた大量の血液が落ちていたのだ。
「この炎の耐性ってのはよく分からないけど……食べられるんなら、今度料理に使ってみよう」
普通なら血液ってだけで忌諱するかもしれないが、俺は食えるって分かれば何でも食べていたからな。お金もないし。
効果を確認して、アイテムボックスに放り込むと、残りの物に視線を向けた。
『魔石:A』……ランクA。魔力を持つ魔物から手に入る特殊な鉱石。
『炎のギター』……デビルベアーから手に入る、レアドロップアイテム。このギターで演奏すると、気分が高揚し、情熱的になる。使いこなせるようになると、炎を操る事が出来るようになる。
「魔石はともかく、ギターって……」
いや、魔石もランクがAってことには少し驚いた。
レベルも高かったし、魔法も使ってきたから普通にSランクくらいかと思ってたんだけど、たたレベルの高いAランクの魔物だったのだろう。ゴブリン・ジェネラルと同じランクだし。
そう考えると、Sランクの魔物ってどんな化物なのか想像もできないなぁ。
「まあいいや。魔石以上にこのギターの方がよく分からないし……」
一応レアドロップアイテムってことらしいが、何故ギター?
ヘルスライムを倒したときのレアドロップアイテム『黒月の首飾り』みたいに、アクセサリーとかの方が良かったんだけど……。
それに、俺……楽器なんてリコーダーと鍵盤ハーモニカくらいしか使ったことないぞ。娯楽や趣味で他の楽器を触るなんて余裕、なかったしな。
つか、使いこなせるようになったら炎を操れるって書いてあるんだけど……魔法が使えるようになるってのとはなんか違うみたいだし、どういうことなんだろうか?
「……まあ今の俺は少し余裕も出てきたからなぁ……本屋で初心者用のギター教本でも買って、練習してみるかな?」
今まで趣味なんて持ったこともなかったけど、これを機に何か始めてみるのもいいかもな。
そう思っていると、不意に目の前にメッセージが出現した。
『レベルが上がりました』
「お、レベルアップだ」
やはり格上と戦うとレベルが簡単に上がるのだろう。その分、とても危険なわけだが。
俺はすぐに自分のステータスを表示した。
【天上優夜】
職業:なし
レベル:235
魔力:5900
攻撃力:7900
防御力:7900
俊敏力:7900
知力:5400
運:8400
BP:200
スキル:≪鑑定≫≪忍耐≫≪アイテムボックス≫≪言語理解≫≪真武術:7≫≪気配察知≫≪速読≫≪料理:5≫≪地図≫≪見切り≫≪弱点看破≫≪同化≫
称号:≪扉の主≫≪家の主≫≪異世界人≫≪初めて異世界を訪れた者≫
「お、二つもレベルが上がってる」
俺自身のレベルだけでなく、≪真武術≫もレベルが上がっていた。幸先良いな。
取りあえず、BPはそんなにないので、運に全部振りして、運は8600になった。
「よし、それじゃあもう少し先にいこますか」
諸々の確認を済ませた俺は、再び森の奥へと足を進めるのだった。
***
優夜が森の探索をしている頃、地球の芸能界では大変なことになっていた。
「おい、あの写真見たか!?」
「見た見た! 美羽ちゃんと一緒に写ってるヤツよね?」
「あの男は? どこの事務所?」
「それがまったく分からなくて……」
優夜とショッピングモールで一緒に撮影をした美羽の所属する事務所では、とある話題で持ちきりだった。
芸能界の情報網は侮れず、美羽の事務所だけでなく他の事務所でも美羽と一緒に写る男性……つまり、優夜のことに関する話が飛び交っている。
まだ撮影から一日しか経過していないにも関わらずだ。
それは、美羽という売れっ子になり始めたモデルの写真というだけでなく、撮影したカメラマンの光もまた、芸能界では超有名な人間だったからだ。
「おい、あの男の子のことを調べろ!」
「名前は!?」
「スカウトマンは何してる!?」
「ウチで絶対捕まえるぞ!」
優夜をスカウトしようと、様々なファッション関係の事務所が動き始めていた。
しかし、一緒に撮影した美羽に事務所が優夜の名前を訊ねても、そこは個人情報であり美羽は知らないことにしていた。カメラマンの光もまた、そういう事務所の考えなどに興味を持たない珍しい人間であり、また美羽と同じ理由から優夜の名前を告げなかった。
そのため、優夜の名前が事務所に知られることはなかったのである。
この判断が果たしてよかったのか、美羽にも光にも、そして優夜自身にも分からない。
だが、美羽も光も、優夜のことを思っての行動であり、優夜自身も今自分の話題が出ているなどとは夢にも思っていないため、あまり関係がなかった。
それに、今の優夜は引きこもり気味である。
外に出るのは、日用品が切れたときか、学校に行く時くらいであり、その日用品もこの間補充したばかりであるため、なおの事遭遇するのは難しかった。
今の優夜は、異世界で過ごすことが何よりも楽しく、よっぽどのことがない限りは異世界での探索はやめないだろう。
――――だが、優夜のことが世間に知られるのは、時間の問題だった。
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