第2話

「おお……」


 城の中はやはり豪奢で、俺には眩しいくらいに輝いていた。ファンタジー映画に出てくる城そのままの光景が目の前には広がっている。


 あまりキョロキョロするのはよくないと思っていても、俺はキョロキョロしてしまう。事実そうなのだから否定はできないが、これでは田舎者丸出しである。


 しばし歩けば謁見の間に辿り着く。豪華な扉が開かれれば、そこには広い空間がある。


 ズラリと両側面に騎士が並び、正面には玉座がある。


 玉座にどっしりと腰を落ち着かせているのは当然、この国の王であった。


 歳のほどは中年。五十を超えた程度と見るべきか。髭を蓄えているその顔は途轍もなく威厳があった。


 雑に言えば、オーラがヤバい。


 これが国王。この国のトップ。


 騎士が添えられた道を委縮しながら進む。そして、玉座のすぐそばまで来る。


 玉座に座る国王は少し高い所から俺を見下ろしていた。


「アスト・タカミネ。珍しい名前だな」


 国王の第一声はそれであった。


「移民なもので」と俺は答えておく。


「私は国王だぞ。もう少し丁寧な発言をしてもよいのではないか?」


「充分礼儀正しくしているつもりですよ。ちゃんと敬語使っていますし」


「君は自覚すべきだ。私が今ここで騎士に命令を出せば、それだけで君の首は飛ぶ」


 こちとら一度死んでいる身なのだ。それに女神曰く俺の寿命は八十九歳。ならば、死に対して恐怖を抱くにはまだ早い。


「飛ばせるものならどうぞご勝手にしてください。王様」


「はははっ」と国王は声高らかに笑う。「これは面白い。肝はかなり座っていると見るべきかな。リーゼロッテから聞いていた通りだ」


 王女は国王に何を話したんだよ。


「我が娘、リーゼロッテ曰く、君は有能な人間らしい。娘より話は聞いているだろうが、改めて君に頼む。我が国のためにその手腕を揮ってくれるかね? アスト・タカミネ」


「そのつもりだからこうやってここにやって来たんです。答えるまでもない」


「受諾する、ということでいいかな?」


「はい」


「ようこそ。我が城へ。私は君を歓迎するよ」


「それはどうもありがとうございます」


「では、早速、ここでの君の役割を任命しよう」


 役職が貰えるらしい。


「ローデンバルト王国、国王、ヴィクトル・ルートヴィヒ・フォン・ローデンバルトの名において命ず。アスト・タカミネ。貴公には騎士の爵位を授ける。そして、君には王室家庭教師として娘の勉学の手助けをして欲しい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る