第二章
第1話
これが王都か……。
馬車に揺られてどのくらい経っただろうか。途中で野宿をして、やっと到着した新天地。ローデンバルト王国の中枢たる王都。
そびえ立つ王城を中心にロス=リオス伯領の中心地とは比べ物にならないほど栄えているかの地。
王城の前で馬車は止まる。目の前には王城の威厳を象徴するかのような頑強で強大な門だった。丸太をぶつけてこじ開けるのが難しいと思えるほど壮大な門である。
開門の号令と共に重々しい門はゆっくりと開かれる。
門が開かれればすぐに王城の玄関が……なんてことはなくて、目の前には王城へ続く長い道があるだけだ。再び馬車は走り出す。しばし走れば今度は階段が見えてきた。
「馬車はここまでです」と階段の所で待ち伏せていた王城の護衛の人が言った。
「上るのかよ……」
見るからに長い階段であった。王城へ向かうだけでこれほどの労力を使うとは。しかし、これが意味するところは、それほどに位の高い人へ会いに行くという意味である。
きっと王室関係者は王城への近道を知っているんだろうな。
俺はそんなことを考えながら、階段を上る。
少しばかり息を上げながら、やっとこさ階段を上り切り、ついに王城の入口へと辿り着いた。玄関と呼ぶには畏れ多い扉が目の前にはある。
そんな扉の前で俺を出迎えてくれたのは王女様であった。
スカートの裾を掴んで、上品に彼女は一礼をした。
「我が城へようこそ。アスト・タカミネさん。歓迎いたします」
「俺、ここで働けるんだよね? ねえ、もしかしてこんな大変な思いして毎日出勤しないといけないわけ?」
「心配せずとも城内に居住場所を用意していますよ」
「でも、城へ来るのがこんな大変ってことは、外出とかやばいんじゃね?」
「詳しいことは追って説明いたします。それよりもまずは私のお父様に会ってもらいますか?」
問いかけてはいるが、きっとこれに拒否権などないのだ。まあ、ここで働く以上、ここのボスの顔は見ておかないといけない。当たり前である。
「はい」
「では、どうぞ。案内いたします」
そう言って、にこりと笑みを浮かべる王女であった。
城の扉が開かれる。俺は城の中へ足を踏み入れた。
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