実家暮らしの苦悩

「まだ寝てるの?」


「早く食べなさい」


「いつ働くつもりだ?」


「……きもい」


 いつもだ。いつも聞こえる。部屋に居て好きなように暮らしたい。好きなだけゲームをしたい。好きなだけ寝ていたい。たったそれだけ。多くは望まない。


「早く食べなさい」


「いつ働くつもりだ?」


「……きもい」


 本当に困るんだよな。迷惑は掛けてないだろ。俺は働きたくないの。ストレスなんてうんざりなの。だから怒鳴っても逆効果なんだよ。分かってくれよ。


「早く食べなさい」


「いつ働くつもりだ?」


 まだ言うのかよ。いい加減にしてくれよ。もう分かったって。


「まだ寝てるの?」


「早く食べなさい」


「いつ働くつもりだ?」


「……きもい」


 またかよ。もう何度目だ。何回言うんだよ。


「卵焼き作ったわよ。あんた好きだったでしょ」


 そうだな。卵焼きは好きだ。それ。そういうのが良い。


「まだ寝てるの?」


「早く食べなさい」


「いつ働くつもりだ?」


「……きもい」


 おいおい、またかよ。もういい加減にしないと俺の我慢も限界だよ。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 よかった。やっと分かってくれたか。これでようやく眠れる。


「まだ寝てるの?」


「早く食べなさい」


「いつ働くつもりだ?」


「……きもい」


 ……ぬか喜びかよ。もういいわ。どうしたって無理なんだな。分かったよ。そんな目で見るな。ちっ。部屋が臭いな。そろそろ掃除しないと駄目か。分かった。分かったって。だからそんな目で見るな。掃除するから。なっ。だからもう見るなよ。


 はあ……その内何も言われなくなるのかな。ゴミ捨てで何とかなりゃいいけど。

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