第3話 彼女とヤハギ
ヤハギは地元の国立大学にストレートで合格した。そしてあの鬼の八か条を厳守するためにRSIの組織力に目をつけ、シオヤから総帥の座を引き継ぎ、非合法で怪しげな仕事を行う金の亡者に変貌した。
大学三年の時点で既に四年分の学費と生活費を稼ぎ、両親に慰謝料の総額を聞いたヤハギはFX(先物取引)に手を出した。そこでさらに大儲けしたヤハギは借金を全額返済してしまう。
もう福井にいる必要もない。大学卒業後は関東で外資系の証券会社に就職した。神奈川県の溝の口にマンションを借りて、そこから田園都市線に揺られて都心の会社に向かう。朝の殺人的なラッシュに顔をしかめながら日々の生活に忙殺される。
お金には困っていないし仕事も順調だった。優秀なヤハギは上司に気に入られて重宝されていた。快適な都会の一人暮らしに満足している筈だった。
毎週恒例の同期との飲み会後、渋谷からの最終電車に揺られて眠らないようにドアの傍に立ち二子玉川の景色を眺めながら、いつしか別れた彼女のことを考えるようになっていた。
ヤハギはある日、思い切って彼女の素行調査を探偵に依頼する。彼女が幸せに暮らしていればそれでいい。でもそうでなければ......この想いに区切りをつけたかった。
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