第4章 未来

第1話 マツミヤとシオヤ

 告白を成功させ、あっさりとシオヤはバトミントンを捨てた。マツミヤとの時間を何よりも優先させるためだ。


 夏休み前に無理矢理シオヤがマツミヤ家に転がり込む形で半同棲がスタートした。シオヤの熱い想いを知った両親たちは寛大な心でこの行動を容認した。二人はマツミヤ家からT高校に通い卒業した。


 シオヤは消防士になり就職。マツミヤは地元の国立大学に合格して、その後専門学校に入学して念願の看護師の国家資格を取得した。しかしその直後に彼女の妊娠が発覚して二人は慌てて結婚。男の子を無事に出産した。


 病院で抱かせてもらった時、けがれのない瞳で見つめられ、小さいながらも鼻、口、耳、指、爪が揃った赤ん坊を見て生命の神秘を感じた。


 首がまだ座っていいないので左腕で頭を支えながら、右腕を輪にして恐る恐る抱いた。壊れやしないかとヒヤヒヤしたが、肌がプニプニで暖かくて小さな赤ん坊を抱くと、本当に幸せな気持ちになった。


「子供欲しくなるでしょ? 」

「そうね......」


 なんともいえない気持ちになり、赤ん坊を見つめていたら何かを察したのか泣き出した。慌てて母親に返すとすぐに泣き止む。まだ見えていない筈だが、人の感情の機微を感じ取るらしい。


「好きな人との愛の証よね......」


 思わずハルナは嘆いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る