第10話 プロフィール
祈るような気持ちで聞く参加者たちの中、カップリング成功者の番号が呼ばれる。その後は男たちが先に退場し、時間差で女性が会場を出て行く。
ガチャピンが満面の笑みで女の子をエスコートして去って行く。他のカップル成立は七組だった。仲良く去って行く者たちには目もくれず、お友達から始めましょうと連絡先を交換する者たち。早くも第二ラウンドは始まっているのだ。参加者がいなくなった後
「今回のパーティーは退場者も出たがひとまず成功と言えるだろう。全てが初めてで、手探りで手作りの最高のパーティーだった。みんな、ありがとう! 」
ヤハギがスタッフを褒め称えた。感極まって泣いている者もいる。撤収作業を終えてファミレスで簡単な打ち上げをした。遠方から来ている者もいるので、早めに解散しそれぞれの家に戻って行く。
その帰り道。自転車を押して田んぼ道を歩くマツミヤとシオヤ。
「終わっちゃったね〜。みんな楽しんでたね」
「うん」
「パーティーも盛り上がってよかったね、私、アシスタントちゃんとできてた? 」
「うん」
「みんな積極的だよね。連絡先交換し合ってさ。私も聞かれちゃった。彼氏いるんですか?って」
「うん」
「シオヤ君、ちゃんと聞いてる? 」
「うん」
上の空だ。マツミヤは頬を膨らます。
「そういえば、イベントも終わってもうすぐ夏休みだね」
「うん」
「もうこうして会えなくなるね」
「......」
シオヤは答えずに急に立ち止まった。マツミヤが少し前に出てシオヤに振り返る。
太陽は沈み、街灯の下に小さな虫が集まり始め、田んぼの周りの薄暗い闇の中からは、何層にも重なった夏の生物の鳴き声による圧倒的なオーケストラが響いていた。
シオヤは自転車のスタンドを下ろして、前かごにあるバッグから紙を取り出しマツミヤに渡す。
「これは? 」
シオヤは答えない。俯いている。怒っているのだろうか? マツミヤは受け取った紙の内容を確認した。
それはお見合いパーティーで使った「プロフィールカード」だった。シオヤの個人情報が書いてある。上から身長や体重を読み、この人スリムに見えて結構重いのね、と感心する。さらに読み進める。
「自分の性格」八年間ずっと同じ子を好きであり続けられる位、一途だと思う。
「好きなタイプ」自分が死にかけた時、いつも笑顔で看病してくれた優しい子。
「最近気になってる事」自分の思いを好きな子に告げて、その子が答えてくれなかったらどうしようかと夜も眠れない。
「夢」好きな女の子と結ばれる事
「デートしたい場所」彼女の望む場所なら可能な限り、どこにでも連れて行きたい。
「苦手な事」自分の思いを全部言葉にする事
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