第9話 告白?
クボは人間としてササヤンを尊敬している。彼女は自分には無い物を持っていた。明るさ、社交性、積極性、向上しようとする意志。自分が諦めたものばかりだ。
そんな人間の弱った姿なんて見たくなかった。別に狙ったわけでは決してない。クボは自分が励まされて元気が出たやり方を真似てみようと思っただけだった。ササヤンの両手を優しく包み込む。あまりに突然のことにササヤンは呆けている。
「大丈夫だから! 」
「へっ? 」
「俺は馬鹿だしコミュ障だから人の励まし方がわからない。だから人のやり方を真似て客観的に思ったことを言うよ。ササヤンは怖そうなギャルだけど、内面は素晴らしい可愛い女の子だと思う。人の気持ちも理解できる優しい子だ。小学生の時からヤンチャだったけど、ハキハキ喋るから会話すると実に楽しい。正直嫉妬するよ。俺にはない能力だから」
黙るササヤン。
「だから俺は君を尊敬している。そんな人間が下を向いちゃダメだ。それは俺のような奴の役割だ。いつもの元気な太陽みたいに明るいササヤンでいてくれよ。頼むよ」
元気付けるつもりが、自分の情けなさを露呈した独白に変わってしまい、クボは情けなくて泣いた。懇願を賞賛と悲しみがミックスした独特の励ましだった。
無線からシオヤがクボを呼ぶ声がする。
「ごめん。行くよ」
涙を拭いてノロノロと去って行く。
ササヤンはずっと、会場から出て行くクボの後ろ姿を見つめていた。
最後の「最終投票カード」にササヤンは何も記入しなかった。矢作が眉をひそめて
「いいのか? 」
と聞くと
「もう大丈夫。見つけたから」
嬉しそうに答えた。なぜか幸せそうなササヤンを、ヤハギは不思議そうに見つめていた。
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