第8話 空回り②
「ふ〜〜」
フリータイム中だが椅子に座り休憩していた。見た目が派手で会話も上手なササヤンはモテた。手には男たちのメッセージと電話番号が添えられたカードを重ねている。
しかし変だ。話すと楽しいし、相手も悪くはない。でも何か決め手がないというか。熱くなれないというか......
「どうしたの〜。疲れちゃった? 」
この男は最悪だった。ヤマダと同じグループにいた比較的派手な奴だった。フリータイムになると本性を晒してくる奴もいる。手当たり次第に声をかけ、いやらしい目で女の子の脚やら胸を見てくるのだ。ギャルであるササヤンは男の視線には敏感なのですぐに気づく。考えるよりも先に口と手が出てしまうササヤンは、絶対に近づかないようにしていた。
「あっち行って」
「そんなこと言わずにお喋りしようよ〜」
しつこくササヤンの肩に手を回そうとする。
「ちょっと! 」
間一髪のところでシオヤが現れた。男の手首を掴み後ろに捻る。シオヤの恐ろしさを知っている男は顔面蒼白になる。
「退場だ」
口を押さえられて外に連行されて行った。クボが声をかける。
「災難だったな。大丈夫か? 」
「なんで私にはあんなのしか寄ってこないのよ! 」
ササヤンは疲れていた。このパーティーを成功させるために入念に準備してきた。そもそもの発端は自分だ。たとえ恋人ができなくても、このイベントを楽しんで良い思い出にしたかった。
「あ〜あ、最悪。なんか冷めちゃった。もう無理なのかな? 」
「なんで? 」
「私ね、昔からよく誤解されてさ。よく遊んでるんでしょ? とか、何人と付き合ってきたの? とか言われたんだ。その度に愛想笑いで誤魔化してきたけど内心は怒ってた。だってそれって褒め言葉ではないじゃない? セクハラよ! 私を見た目で判断して何が楽しいのよ! 」
クボは無言だった。
「今日も男たちは私が遊んでそうで、見てくれがいいから声をかけてきたわ。でも私はそうじゃなくて、中身を見て欲しいだけなの。そんなに高望みしてるかな? 」
ササヤンは実は繊細だった。自分を磨くためにやっていることが、逆に自分の首を絞めている。空回りして、疲れて、弱り果てていた。
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