第9話 リクルート②

「なぜ僕が嘘をついてこんなことをしたのか、順にお話しします。そもそもは僕の友人が隣にいる彼女に提案したのがきっかけでした。」


 ヤハギは順を追って説明していく。正直に話して説得すると決めていた。もう小細工はしない。ここにいる作戦コード「プロジェクトG」(Gは合コンの頭文字でクボが命名した。大好きなジャッキーチェンの映画の名前からの引用だった)の運営スタッフ候補は逸材ばかりである。RSIの情報からピックアップした性格、頭脳、素行を吟味してマツミヤに仕掛けたようなトラップを回避して、ハルナを助けようとした慈愛の精神を持った少女たちである。そして今は恋愛を求めていない者たちである。


 ヤハギは自分の十字架のことも話した。自分がなぜこの計画に参加したかという動機、幼馴染への思い。


「高校生活というのは思春期の真っ只中であり、自由な時間が持て、様々なことに挑戦できるモラトリアムの期間だと思います。大学生になってからでもできるかもしれません。でも僕はこのメンバーでやりたいんです。出会いは貴重で、人生は短いです。僕の赤ちゃんのように死んでしまうことだってあります。心身ともに健康でなければ恋なんてできません。例え恋人ができなかったとしても、きっかけにして欲しいのです。それは自分を変えることかもしれません。何かに挑戦することかもしれません。己を知ることかもしれません。が大事なんです。このイベントはみんなの大切な思い出にきっとなります。いや、します。どうか、僕たちに力を貸してください。お願いします」


 ササヤンも続く。


「これからの人生を独身でずっと生きていく人ってあまりいないと思う。やっぱり女の子だもの。オシャレしてお化粧してデートしてみたいじゃない? うちは女子校だから、勧誘した子はよく「出会いがない」って言ってたわ。でも本当にこれでいいの? と感じている子も多いことがわかった。好きになった人とデートできたら素敵だと思わない? そしてそれが恋に発展したら最高だと思う。私もこのパーティーは絶対に成功させたいです。どうか力を貸してください」


「会場の警備、荒事処理、アフターケアも秘密厳守でしっかりやります。お願いします」


 シオヤも頭をさげた。


 辞退する者はいなかった。その後白熱した議論が飛び交い、パーティーの計画が練られていった。結局一日では決められないということで、後日に持ち越しになってしまった。

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