第8話 リクルート

 マツミヤはバイトの面接会場に来ていた。ここはS市公民館。子供の時はよくここで遊んだ。鬼ごっこ、輪投げ、けん玉、トランポリン、ドッジボール。懐かしい記憶が蘇る。


「こんなに小さな建物だっけ? 」


 身長が高くなり目線も高くなったのだ。遊具類もサイズが一回り小さくなったように感じる。


「もうあの頃には戻れないんだな」


ノスタルジックな思いに浸っていると


「あれ、マツミヤ? 」

「シオヤ君? どうしたの? 」


 気まずそうに頭を搔くシオヤ。


「実はアルバイトの面接なんだ」

「嘘、私も! すごい偶然だね。でもバイト禁止だよ。悪いんだ〜」


 意地悪そうにする顔も可愛い。


「そっちだって禁止だろ。新しいスニーカーが欲しくて。短期だし、バレないかなって」

「私は友達に誘われて仕方なく」


 すると他の高校生らしき女子が数名現れた。バイト参加者だろうか? 手を振るハルナの姿も見える。会場案内の矢印通りにゾロゾロ進んでいく。体育館に椅子が並べてあり、「ここでお待ちください」と張り紙がしてある。なんとなくみんな黙って待っていると、体育館のドアが開かれた。


 真面目な顔で入って来たヤハギとササヤン。マツミヤのお驚く顔を無視して一礼する。


「知っている人もいるとは思いますが、僕はT高校のヤハギと言います。隣の彼女はササキです。今日はお忙しい中集まって頂き、ありがとうございます。いきなりですが謝らなきゃいけないことがあります。婚活パーティーのアルバイトの面接というのは嘘です。ごめんなさい」


 あっけにとられる少女たち。

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