第4話 オンステージ③
わずか二週間でシオヤはササヤンのF高と我々T高校の生徒の素行を調べ上げて、恋人の有無、過去の異性関係、性格を中学時代のRSI(rika matsumiya scene investigation)正式名称マツミヤ専門捜査班の力を使い調べ上げていた。その報告書によると二年四組の男子生徒は全員が童貞の線が濃厚である(ヤハギは除く)。
またF校の生徒についてはササヤンが計画に賛同し、報告書でフリーと判断された彼氏のいない子に個別に話を持ちかけた。以外にもみんな快く協力してくれて、今回の宣材写真もポーズを決めてノリノリで撮らせてくれた。口外しないように約束してもらい、RSIの協力による情報の精査とすり合わせてササヤンが慎重に勧誘していた。
会場はS市の公民館を抑えることができた。目的は高校生同士の文化交流という名目にしてある(あながち間違いではない)。規模は四十人が限度だという結論になった。男女の比率を半々にしたかった三人は灯台下暗し、二十人のウブな童貞が近くにいることを知ったのだ。もちろん野郎を個別に口説くのが面倒だったのは言うまでもない。
「この生写真を見なさい。この娘たちは全員彼氏募集中のF高の生徒であり、しかも処女だ(だったらいいなぁというクボの願望)」
ゴクリ。生唾を飲み込む。
「ハア、ハア」
何人かの息が荒い。催眠が効きすぎである。クボは続ける。
「この子たちの他にも素晴らしく可愛い子が、君たちとの出会いを求めていたらどうする? 君たちは放っておくかね? それとも......」
「お願いします! 僕たち哀れな童貞にチャンスをください! 彼女が、欲しいです......」
ヤマダが某漫画で聞いたようなセリフを吐いた。
「俺からもお願いします! 」
ガチャピンもすかさず叫ぶ。教室は興奮の坩堝と化していた。泣いている者、神に祈る者、クボの靴を舐めようとしている者。クボは現在、神に等しい存在だった。クボの一挙手一投足に歓喜し震え上がる童貞たち。
俺は......俺は......神だったのか......クボもトリップしていた。
「みんなの願いはわかった!近いうちにF高との合同コンパを開催する。君たちは選ばれたのだ。このことは我々だけの秘密だ。絶対に他の人間に漏らしてはならない。漏らしたものには天罰が下るであろう! 開催日程は決まり次第知らせる。以上だ。解散! 」
矢作が電気をつけて塩谷がカーテンを一気に開けた。
「あ〜、目が、目が〜」
現実世界でこのセリフが聞けるとは思わなかった。新鮮な空気と涼しい風が流れて換気されていく。お香も消して廊下側の窓も全開にした。みんなが少しづつ正気に戻っていく。
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