第2章 プロジェクトG

第1話 プレゼン

 放課後、ヤハギ家の部屋に三人はいた。用事があると言って部活動を休んだヤハギ。この話は人のいないところでしたいというシオヤ。相変わらず状況が飲み込めていないクボ。


 まずヤハギがシオヤの気持ちを確かめる。二人の会話を聞いてさすがのクボにも状況が見えてくる。


「それで手助けとはどういうことだ? 」


 そうだ、それがわからない。クボもヤハギを見る。


「他校との合同コンパを開催しようと思う」


 ヤハギは説明する。


「今クボはある女子校のギャルから知的な男を紹介しろと依頼を受けている。その子は俺たちの幼馴染なんだ。できれば紹介したいが、一人一人男を引き合わせるのも手間だろう? お見合いじゃあるまいし、そんな時間も金もない。そこで女子校の方からも彼氏を作りたい女子と、うちの高校からも彼女を作りたい男子を募集して、集団お見合いパーティーを開催したい。一人じゃ心細いが友達と一緒ならと、参加する人間は多いと思う。そしてこれはあまり宣伝はできない。不純異性交遊だと大人に潰される恐れがあるからな」


「マツミヤが参加するとは限らないだろう? 」


 黙って聞いていたシオヤが疑問を口にした。


「彼女は運営側にスカウトする。そして俺たちも運営側に回る。シオヤの中学時代の人脈を使いたいんだ。当日の会場警備や荒事が起きた時に対処してもらいたい。お前の情報網を駆使して危険人物や、恋人がいるのに参加しようとする者の排除、この計画をリークしようとする者に脅しをかけと欲しい」


「それはできるが......... 」


 できるんかい! クボは心の中で突っ込む。


 渋るシオヤ。ヤハギはシオヤの両肩を掴んで、真っ直ぐ目を見て語りかける。


「今までマツミヤに近づいてくる男を追っ払う事しかしてないんじゃないのか? 自分の気持ちを伝えたことがあるのか? 」

「それは...... 」


 唇を噛むシオヤ。


「いくらスポーツに打ち込もうが、彼女に近づく輩を排除しようが、マツミヤがお前に振り向くことはない。断言する」


 この世が終わったような絶望の表情になるシオヤ。


「女の子には自分の気持ちを伝えなきゃダメだ。振られるのを恐れるようじゃ、一生そのままだぞ。だから一緒に仕事をしてお前の有能さを彼女にアピールするんだ! そして仕事を成し遂げた後、成し遂げた後だぞ。思いを告白しろ。大丈夫。きっと伝わるし、成功するさ」


 成功する場面を妄想、いや、想像してニヤつくシオヤ。気持ちが悪い。


「俺やるよ! 頼む、俺に参加させてください! 」


 土下座するシオヤ。頷いているヤハギ。二人は固い握手をした。



「お前、アレ嘘だろう? 」

「なにが? 」


 早速準備に取り掛かると言って、部屋を飛び出したシオヤ。


「マツミヤに想いが絶対伝わるなんて、あんなこと言って大丈夫なのか? 」

「絶対とは言ってない。だ。希望的観測だ。ああでも言わないとお前が半殺しになってたし、奴の力はこの計画には必要だ」


 アッサリと言う。詐欺みたいなもんじゃないか。


「見込みがないわけじゃないさ。奴の気持ちは本物だし、マツミヤ次第だろうな。仕事が終わってから、告白しろとも釘をさしたし、奴はモチベーションは保つだろう。あとは神のみぞ知るってやつさ。俺の責任じゃない」


 肩をすくめて首を横に振るヤハギ。


「俺は明日直接ササヤンに説明しに行く。お前も忙しくなるぞ」


 何かとんでもないことが起きる。そんな予感がしていた。


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