第19話 シオヤのライフワーク
シオヤと同じ中学校に進学したマツミヤは健やかに成長していた。明るく聡明で笑顔が素敵な癒し系の彼女はモテた。当然悪い虫も寄って来た。
シオヤは暗躍する。朝、昼、放課後の下駄箱チェック。ラブレターの場合マツミヤの筆跡を偽造してお断りの返事を書いた。本人に絶対見せられないトラウマ確実の邪悪なモノは神社に奉納して清めた。
時間がなくて下駄箱を確認できない場合、スパイを向かわせた。
マツミヤの女友達を買収して情報収集、私物の横流しを行った。マツミヤのマイブームの情報や身につけていたアクセサリー、生写真、調理実習で作った料理などに金を支払い手に入れた。
校内の情報通と交渉して拒否した場合、鉄拳交渉の後スパイに仕立て上げ彼女に近づく輩のブラックリストの作成を命じた。なおこのブラックリストに載ったものには三日以内になぜか不幸が襲い掛かった。
軍資金を得るためのアルバイトでバトミントン大会の助っ人、ジムのインストラクターをした。中学生ではあったが、シオヤの驚異的なトレーニングの知識は重宝された。
さらに驚異的なのはこれらの仕事をこなしながら八時間睡眠を維持していることだった。常人の神経では、ましてや中学生では務まるはずがなかった。全ては愛のために。
二年間はこれらの活動に忙殺されて青春を過ごした。
ヤハギはその洞察力を持って今のシオヤの胸中を見抜いていた。危険な男だ。中学時代のこいつの黒い噂は知っていた。しかも狡猾でなかなか証拠をつかませなかったシオヤが、無関係の俺もいるのに襲いかかろうとしている。よほど頭に血が昇って我を忘れているのだろう。
あの時の彼女の父親と同じ目をしている。大事なものを汚されてしまった怒りの目だ。無言なのがまた恐ろしい。焦るヤハギに対し、隣のクボは状況がわからず呑気なツラをしている。
マツミヤがらみだとこいつは狂気に走る。何か手はないか? ヤハギの灰色の頭脳が高速で回転する。大きく息を吐いた。
「松宮には告白したのか? 」
「!」
「?」
「なんなら俺たちが手助けしてやろうか? 」
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