第16話 シオヤ②
この男は好きな女子の前ではヘタれてしまう性質があるため、なかなか想いを伝えることができなかった。
身体能力を生かしたスポーツの分野で頑張れば振り向いてくれるかもしれない。そう信じて努力して、ついに全国のジュニアの間でも実力が認められるようになった。しかし頑張れば頑張るほど大会、遠征、合宿に時間が取られて、松宮の前でアピールする機会は減っていくことに気づき、今では競技から離れていた。
全国の強豪校からのスポーツ推薦を蹴ってT高校に来たのも彼女がいたからである。中学時代そんなに成績は良くなかったが、担任と親からの猛反対を押し切り猛勉強をして自力で筆記試験に合格した強者だった。
T高校にはバトミントン部がなく、一人では練習にならないので引退するつもりだったが、シオヤの経歴を惜しんだ体育教師の計らいにより、特別に同好会という形でなんとかバトミントンの世界につなぎとめていた。
未だに編入してくれという高校が後を絶たない。T高校側もシオヤの将来性に期待して、散々先生たちが口説いているがいつも決まって
「愛に勝るものはないんです」
と訳のわからないことを言って関係者を困らせるのだった。
シオヤは小学生までは気性が荒かった。身体が大きく運動神経が良かったため、いつも暴力で物事を解決していた。心配した両親はスポーツをやらせれば発散するのではないかと考え、近所のバトミントンクラブに通わせた。しかし負ければふてくされる。ものを壊す。因縁をつけては喧嘩を仕掛けてクラブの和を乱し続けていた。
そんなある日、調子に乗っていたシオヤはクラブの帰り道で中学生のヤンキーグループに絡んだ。大人数相手でシオヤは半殺しの目にあう。そこを偶然バトミントンクラブに入ろうか見学に来ていたマツミヤ
危険な状態だったが早い段階で呼吸が戻ったこと、最初の応急処置が適切だったこと、早く病院に来れたことから、後遺症もなく生還できた。
シオヤの両親は今でもマツミヤ母娘に恩義を感じ、季節の節目には必ず祝いの品を送ってくる。おそらく一生送り続けるつもりなのだろう。シオヤの両親から強い意志を感じて、マツミヤ母は断るのを途中で諦めた。
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