第13話 ヤハギの過去②
「だから一年生の時の夏休み会えなかったのか。病気って聞いてたから心配してたよ」
ヤハギは高校一年生の入学当初はふっくらしていたが、夏休み明けは激痩せしていた。顎が砕けて飯が食えなかったのだ。そして一時期ストレスによりやけ食いして、激太りしていた。
「夏休みは彼女のことばかり考えていたよ。堕した子供のことも考えるようになってさ。テレビで赤ちゃんが映ったりしたら、胸が締め付けられて堪らなくなるんだ。夢にも出てきてうなされるようになった。もちろん俺には彼女の中絶する時の身体の痛みはわからないし苦しんで当然だと思う。赤ちゃんだって、俺がもっとしっかりしてればこの世に生まれてこれたんだ。俺は償わなきゃいけない義務があるが、赤ん坊には罪はないだろう? 最近俺は定期的に水子供養の神社に行ってお参りしてるんだ。そのおかげかな......やけ食いも治ったし、今では薬で眠れてる」
クボは何も言えなかった。ササヤンは口を押さえている。周りのお客達も黙っていた。
「本当は彼女に直接会って謝罪したいがそれは約束だからできない。だから俺は誓ったんだ。もう二度と愛する人を傷つけないって。今回お前たちに話したのは幼馴染で親友だから。俺と同じ過ちを犯して欲しくなかったんだ。幸せな恋をしてもらいたいから」
肩を落としてヤハギは告白した。もうこれ以上話し合う雰囲気ではなかったので、日を改めることにして別れた。
帰り道、早くも鳴いていた蝉時雨がやたら大きく聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます