第12話 ヤハギの過去

 ヤハギは高校一年生の四月、他校の三年生の女子と交際を始めた。帰宅途中に突然告白してきたらしい。ヤハギは巨乳好きで胸の大きなふくよかな女性が好みだった。


 やがて愛し合う二人の間に子供ができてしまった。夏休み前に生理がこなくなった彼女から言われ、市販の妊娠検査薬で確かめると陽性だった。高校を中退して働こうとしたヤハギは、ます彼女にプロポーズして十八歳まで待ってもらう約束を取り付けた。次に彼女の親に報告しに行った。


 そこでヤハギは相手の父親にボコボコに殴られた。何度も顔面を殴られて口の中がズタズタになり血反吐を吐いた。あまりの恐怖に小便を漏らした。それでも相手は殴るのを止めなかった。彼女も彼女の母親も泣いていた。


 ヤハギの両親にも知られることになり、そこでも自分の父親に殴られた。顎が砕けた。


 両家の親による話し合いが行われて堕ろすことが決まり、そのための費用、慰謝料が速やかに支払われた。彼女はずっと抵抗していたが、両親の説得により渋々承諾した。


 どんな話し合いが行われ、かかった費用の詳細等はヤハギには一切知らされていない。ヤハギの入院中に全てが決まり終わっていた。


 その後、ヤハギは女の子に対する接見禁止的な念書を両家立会いのもとで書かされた。それ以来女の子には会っていないし、どこで何をしているのかもわからない。その夜、ヤハギ家の家族会議で取り決めが行われた。


 ①大学まで行くこと(学費の安い国立、もしくは夜学に通い働きながらでも学ぶ。大卒の方が就職できる会社、給料が多いため。)

 ②学生の間は彼女を作らないこと(ヤハギ自身が言った)

 ③高校までは勉強に集中してバイトはしない(学年十番以内をキープすること)

 ④合格した大学の入学金、一年目の授業料は親が建て替えるが在学中にバイトをして返済すること(金の無心は一切受け付けない。ただし実家に住むことと、ご飯は食わせてやる)

 ⑤単位不足による留年は認めない(留学は除く)

 ⑥相手の女の子を探さない、合わない、連絡を取り合わない(黙って会っていた場合、殺す)

 ⑦就職したら慰謝料の返済をすること(金額は就職時に知らせる)

 ⑧これらの約束を一つでも守れなかった場合、家から叩き出し勘当する。


 これらの誓いをその年の正月にヤハギ家親族の前で宣誓させられた。


「親族全員でお前のことを監視してやる。男なら行動で反省の意志を示せ」


 この鬼の八ヶ条の書かれた文書は二通存在する。ヤハギ家に一通、彼女の家に一通(捨てられていなければ)。


「お前が何を反省し、これから何をしようが勝手だが、二度とここには顔を出すな」


 相手の父親に吐き捨てるように言われた。





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