第11話 希望内容

「じゃあクボは役立たずで、約束も破る嘘つき野郎って事? 」


 お怒り気味のササヤンが目を釣り上げている。クボは縮み上がった。


「まだ約束は破っていないよ。まだ詳しくササヤンの好みも聞いていないし、協力者も連れてきたから、みんなで相談しようよ」


 ジト目のギャルに睨まれて生きた心地がしない。


「でも、そっちから提案しといて諦めるの早くない? 努力はしてみたの? 何もせずに今日が来るのを待っていただけじゃないの? 」


 痛いところを突いて来る。確かに一切何もしていない。能無しのサラリーマンが上司に説教されているようだ。


「言ったでしょ。知的な彼氏よ。顔はよっぽどじゃなければ我慢するわ。性格はそうね......私のわがままを許してくれる広い心を持った人よ」


 わがままを自覚しているだと? クボは唖然とする。


「年齢は? 」

「制服デートが夢だからあんまり年上は困るな。援助交際みたいに見えちゃうし。でも年下でもいいわ。あんまり年下でも困るけど」


 結局幾つなんだ? クボの頭の容量は完全にキャパオーバーしていた。ヤハギは沈黙を保っている。こいつも使えない。だんだんイライラしてきた。


「お前今まで男と付き合ったことあるのか? 」


 急にヤハギが口を開いた。


「あ、あるわよ......」


 久保でもわかる。嘘だ。急に前髪を弄りだした。組んだ足が貧乏ゆすりを始めた。非常にわかりやすい。


「それはいつ? 相手の年齢は? 名前は? 」

「えーと、えーとねー」


 目線が泳いでいる。設定を考えている。こいつは役者にはなれない。


「別にお前に男性経験が無い処女でも俺たちは気にしないから。正直に答えてみな」


 子供をあやすように語りかけるヤハギ。先生のようだ。


「処、処、処女なんかじゃないし。馬鹿。何言ってんの? 信じられない。ば、ば、ばかお前、いきなりお前。は〜〜〜? 」


 バージンだ。間違いない。


「俺たちも童貞だしお揃いだな! 」


 クボはササヤンに助け舟を出したつもりだった。ササヤンの本気で軽蔑した目がクボに容赦無く突き刺さった。


「俺は違うよ」


 ヤハギの爆弾発言に二人は驚愕した。


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