第7話 ササヤンアタック②

「なんで彼氏できないのかな〜。近所のヤンキーにしかナンパされないし。ほらっ、私って知性のない男って嫌いじゃん? 明らかに身体目当てのスケベ面の馬鹿ばっかり! もう、うんざりなのよね! 」


 愚痴ってきた幼馴染。その疲れた顔からは小学生の時のはあどけなさ、純真さが全く感じられなかった。彼女は大分やさぐれていた。クボは自分の心が冷えていくのを感じた。勘違いしなくて本当に良かった。


「あ〜あ。どっかにいい男いないかなぁ。高校生になったら自分磨きして、彼氏も作って、絶対に面白いことが待ってると思ったのに。全然そんなことない。中学の時とあんまり変わんない。つまんないわ」


 実はクボも高校生になったら楽しいことが必ず待っていると信じていた。しかし実際は彼女どころかヤハギしか友人がいない。何をしても上手くいかず、自信をなくして他人とかかわず、何も挑戦していなかった。


 彼女は違う。自分で満足できない状況をなんとか打破しようとしている。それが自分磨きで彼氏を作るという、なんとも本能に忠実な欲望ではあったが、前向きなエネルギーに満ちていた。正直羨ましかった。


「じゃあ、うちの高校の男子紹介しようか? 頭いい奴なら結構いるよ......」


 その時の彼女の眼は獲物を狙う雌ライオンのようだった。僕らは連絡先を交換して別れた。


「連絡待ってるから! 」


 スカートを翻し、一陣の風のように去っていた雌ライオンを見送り、空を見上げた。


「やってしまった......」


 頭を抱え込みしゃがみこんだ。見知らぬおばちゃんが心配してくれた。待っていたバスは行ってしまった。

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