第6話 ササヤンアタック

 大会が始まり団体戦でヤハギは活躍した。チームの二番手として二十射中十八的中てきちゅうした。団体では三位入賞したが個人では予選敗退した。気力を団体戦で使い切ってしまったのだろう。しかし表情は満足していた。貢献できたこと、全力を出し切った選手特有の清々しい表情だった。


 チームメイトの先輩から手荒い祝福を受けていた。クボは敢えて近づかずに軽く手を挙げて合図した。また学校で祝福すればいい。意図を汲み取ったヤハギは「すまんな」と口パクで答える。


 混まないうちに帰ろうとバス停に向かう途中、何者かに肩を叩かれた。この甘ったるい香りは......


 満面の笑みのササヤンが立っていた。彼女は大会中、裏方として参加していたらしく競技には出ていない。今は女子の部で彼女の学校が優勝した表彰式が終わり、着替えと撤収作業待ちだった。


「どうよ?」


 ドヤ顔で自信満々に尋ねてくる。


「ああ、初めて観戦したけど面白かったよ。個人戦の決勝では的中数が同じだと、より中心に近い矢が勝つ遠近法えんきんほうというサドンデス方式になるんだな。それに......」


 女性恐怖症も患っているクボは目を合わせずに早口でまくしたてる。


「そうじゃなくて! 私! 私はどうよ? 」


 彼女の顔を見た。近すぎて強く甘い匂いを嗅いでしまい、頭がくらくらする。


「何が? 」

「私は女子としてどうよ? 」

「というと? 」

「鈍いわね。魅力があるか、彼女にしたいかどうかってこと! 」


 クボは思考が追いつかない。それって......それって......


「い、いい、イイイ、良いと思います......」


 盛大に噛んだ。今までの人生で女性に面と向かって褒めるような状況なんてなかった。というか恥ずかしくて顔を合わせたことがないため、毎日会うクラスの女子でさえ顔と名前が一致するか怪しい。これでも精一杯褒めたつもりだった。


「そうよね。イケてるはずなのよね」


 彼女はヤンキー座りになった。短いスカートから健康的な太ももが露出して、クボは思わず顔を背けた。


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