2
「ハァ、ハァ、ハァ」
こんなに走ったのいつぶりだろう。
私は気づいたら一本の桜の木の前に立っていた。
「ここは……」
綺麗な桜。
それも満開の。
「……」
私、この桜……知ってる。
何で?
桜はみんな似たような木だから、ただの思い違い?
……ううん、違う。
やっぱり……絶対知ってる。
「……和紗」
「っ!!」
後ろから風が吹いた。
声が、した。
今度ははっきりと。
私はゆっくりと振り返ろうとした。
けれど、できなかった。
もうその時には、私は腕の中に捕らわれていたから。
「和紗……会いたかった」
その言葉を聞いた瞬間、私は思い出した。
全てを。
幕末に生きたこと、新撰組にいたこと、あなたについて行ったこと、あなたに最期を看取ってもらえたこと。
それから……
大切な約束をしたこと。
「やっと……見つけた」
「……土方さん!」
クルリと身体を反転させ、彼の胸に飛び込んだ。
懐かしい、この感じ。
そして、ついさっき彼が言ってくれた言葉から、本当に約束を守ってくれたんだとはっきり分かった。
…………嬉しい。
どうしよう。
たまらなく、ただただ嬉しい。
「……泣くんじゃねぇよ」
「だって……だって……」
会いたかった。
またこうして名前を呼んで、抱きしめてもらいたかった。
……先に逝ってしまった私が言えることじゃないけど。
それでも。
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