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 土方さんの部屋を出ると、自分にあてがわれた部屋へと足を進めた。





 部屋に着くや否や、壁にかけられた鏡の前に立った。



 着物の襟を肩から下に下げ、怪我の具合を確かめるのがここ最近の日課になっている。



 傷口を見るために取った包帯は赤く染まり、床にとぐろを巻いた。



 出血の量がだんだん増してきている。



 かなり良くないのは誰の目からも明らかだ。

 




 「………ッ! ハァ、ハァ」





 閉めきった部屋の暗がりの中で、まるで罪人のように息を殺して痛みに堪えながら包帯を巻き直した。



 こうして死を間近に感じると、妙に昔のことが色んな拍子に思い出されてくる。



 噛みしめた口からこぼれる声は、痛みに堪えるためのものだけではなかった。





 ………今だけ。



 今だけ泣いてもいいだろうか。



 女であることをやめ、新撰組のみんなと共に歩むと決めた時から涙を人前で流すことはやめた。



 鍵は閉めた。



 部屋には誰もいない。



 私一人。




 鏡に拳をつきながら、足の力が抜け、ズルズルと地面に崩れ落ちる身体に抗うことはせず。





 「……あの頃に、戻りたい…」





 私のただ一つの願いは当然叶えられることなく、宙に消えた。



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