第4話 空腹に勝てず出奔する
「お腹が空きましたわ」
1週間経ちましたがやはり誰も来なかった。いい加減魚ばかりも飽きて来たな。このエンドは幽閉後自殺じゃ無くて絶対餓死だ、餓死。インベントリなかったら2日目くらいで脱水で終わってるぞ。
記憶を思い出す限りはそれなりに良い家族関係だったのに。まあ、この一年は弟のクリストフとはうまくいってなかったと思うが。小さい頃は『姉様、姉様待って~』とちょこちょこ後ろを追いかけて来て萌えかわゆかったのに。リリアが現れてからおかしくなったのよ。
パパンだって成績褒めてくれたり、誕生日はプレゼントいっぱいくれたし。クローゼットの中の大量のドレスや装身具も一緒に選んだものもいっぱいあった。事あるごとにくれたプレゼントは愛からではなく物質的に満たしておこうと言う算段から?そんなことはない、記憶を探ればママンとパパンの優しい眼差しが脳裏に浮かぶ。
やはり王太子との婚約破棄は地位的にまずかったのか、でも飢え死にさせるほど?
ゲームのエレーニアは両親の仕打ちに耐えきれず自殺したのかな。
ま、このままここにいても飢えるだけなので出て行こうと思います。手紙でも書くか。テーブルに座ってインベントリから紙とペンを出す。なんて書こうか?
カリカリカリ…
『お腹が空きましたわ』
おおっと、勝手に手が、今の気持ちを綴ってしまった。う~ん、後にするか。
まず着替え。インベントリの中に何か……お、学園の魔物討伐実習の時の服に皮鎧があった、これに着替えよう。装備はどうしようか?剣士スタイルで行くか弓士スタイルで行くか。両方持ってみよう。
弓と矢筒を背負う、腰に片手剣が欲しいな。愛用のエストックは装飾華美なのでやめておく。鉄のブロードソードがあった、これにしよう。あとはアイテムバックを斜めがけしてと。
お、イイじゃんイイじゃん。なんか駆け出し冒険者に見える。そっか、その手があった。冒険者になろう。せっかくの異世界転生、剣と魔法があって、エレーニアちゃんはどっちも使える。冒険者になって隣の国にでもいってヒャッハーしよう。
ふと鏡を見る。特徴的な銀髪ロング、あんまり冒険者っぽくない?手入れの行き届いたロングヘアーは貴族の嗜み、このままじゃ貴族令嬢ってバレるかな。そだ髪短くしようかな、うん、綺麗な髪だけどまたのびるし。
ジャキジャキジャキン
肩口あたりで切ってみた。エレーニアちゃんってばショートも似合う。髪の短い侯爵令嬢なんていないし。
じゃあ1週間お世話になった塔とオサラバだ。
あっ、このベッドとテーブルと椅子貰っていこう。インベントリにポイッとな。
と、その前にすっかり忘れていたステータスの確認。
転移転生モノでありがちな『ステータスオープン』の言葉で自分のステータスを表示するシステムでは無かった(ふっ、やってみたさ)だがステータスは存在するはずなのだ。元が乙女ゲームなのだから。ラノベではステータス表示の必要がなかったのか作者が省いたのかは知らない。
だが乙女ゲームの世界が基本のはず。バトルあり、狩あり、ダンジョンありで、好感度上げる為の各種ミニゲームも存在した設定、ステータスが関係するのは当然。【悠久のオルフェ】が何処まで造りこまれた設定であったかわからないが、トレーニングと銘打ったステ上げ機能があったゲーム昔したことあるし。
そう、いちいち口に出さなくても〈ステータス〉と思考するだけでよかった。なんてことはなかった。
名前:エレーニア=ディヴァン
年齢:17歳
性別:女
種族:人族
HP:★★★★★、★
MP:★★★★★、★★★★★、★★★★★、★★★★★、★
SP:★★★★★、★★★★★
なんじゃこの表示は?星?星なのか!数字じゃなくて星ぃ~?!
筋力:★★★★★
魔力:★★★★★、★★★★★、★★★★★
体力:★★★★★、★★★
知力:★★★★★、★★★★★★
敏捷:★★★★★、★
抵抗:★★★★
幸運:★★★★★、★★★
うん、パラメータまで星デスカ?STRとかアルファベット表示じゃない。パラメータの種類的にはこんなものだろうか。まあ、RPGじゃなくて乙女ゲーム(恋愛シュミレーション)だし。しかしこの星マーク、パラメータとしては高いのか低いのかわからんぞ。MPズバ抜けてるけど。まあ数値だったからといって比較できないから結局強いか弱いか解らないじゃない?
ラノベの世界(かもしれない?)といっても大元は乙女ゲーム、ダンジョンRPGとかバトルとかあった設定だがもしかして低年齢向けゲーム?いや、今時は小学生でも普通にオンラインゲームバンバンやり込んでるご時世だ。乙女ゲームだけに可愛い系仕様か!もしくは適当?
職業ジョブ
貴族令嬢 Lv.MAX
王妃(仮) Lv.★★★★★
剣士 Lv.★★★★
騎士 Lv.★★
拳士 Lv.★★
戦士 Lv.★★
槍士 Lv.★★★★★、★
弓士 Lv.★★★★★、★
狩人 Lv.★★★★
盗賊 Lv.★★
野伏 Lv.★★
獣使い Lv.★★★★★、★
召喚師 Lv.★★★★★、★
魔術師 Lv.MAX
魔導師 Lv.★★★★★、★★
薬師 Lv.★★★★★、★★
魔法薬師 Lv.★★★★
治療師 Lv.★★★★★、★
錬金術師 Lv.★★★★★
魔導技師 Lv.★★
付与術師 Lv.★★★
鑑定師 Lv.★★
釣り師 Lv.★★★
料理人 Lv.★★★★★★
お針子 Lv.★★★
機織師 Lv.★★★
細工師 Lv.★★
下位魔法属性:全属性
光:Lv.MAX
闇:Lv.MAX
風:Lv.MAX
火:Lv.MAX
水:Lv.MAX
土:Lv.MAX
雷:Lv.MAX
貴族令嬢って職業なの?ジョブなの?しかもMAX。王妃(仮)、カッコ仮って、婚約者で結婚してなかったけど、お妃教育受けてたからなのか。ああ、一生カッコ仮のままだな、これ。て言うかこんなジョブいらん、消去希望します、消してちょうだい。
貴族令嬢に盗賊とかあるのはどうかと思うのだけど。まあジョブはあくまでもその技能を習得しているってことで、それを生業としているんじゃないから。
あれこの【鑑定師】ってジョブ、こんなのも持ってるよ。レベル星二つで低いけど、そういや武器防具チェックしてた時何気に素材とかの説明頭に浮かんだな。
【釣り師】や【料理人】もジョブでスキルがあるのか。
下位魔法属性:全属性
光:Lv.MAX
闇:Lv.MAX
風:Lv.MAX
火:Lv.MAX
水:Lv.MAX
土:Lv.MAX
雷:Lv.MAX
上位魔法属性:全属性
回復:Lv.★★★★★、★★
時間:Lv.★★★★★、★★
空間:Lv.★★★★★、★★
爆炎:Lv.★★★★★、★
氷雪:Lv.★★★★★、★
樹木:Lv.★★★★
重力:Lv.★★★★
基本属性オールMAX、やっぱり魔法職だよね、エレーニアちゃんは。レベルMAXってもしかして星10個なのかな?
ああ、なんかスキルとかもういいわ。山ほどありすぎていちいち確認するの大変になってきた。さっと流そう。エレーニアちゃんほんと優秀すぎ。
ふんふん、スキルにはパッシブとアクティブとあるのか、【剣技】とか【体術】のスキルはSP使うものが多いな。
ええっと、〈千切り〉とか〈桂剥き〉もスキル………おい!
「くらえ〈千切り〉!!」とか叫びながら料理すんのか…あ、よかった〈無詠唱〉スキルあった。
いちいちスキル技叫びながら料理してたら厨房五月蝿い……料理人が〈無詠唱〉スキル持ってない厨房ってやだなぁ。レストランで食事してたら厨房から技名連呼……行きたくねぇ。
………
………【料理】パッシブスキルか、アクティブでなくてよかった。
あれ?何これ……
加護
大地母神の加護
天空父神の加護
時空神の加護
異世界神の加護
神様の加護、むっちゃあるんですが、いつから?この世界の宗教ってどうなってたっけ?そして異世界神…やっぱり転生なんでしょうね、これがあるってことは。
さてステータスを確認も終わったしそろそろ脱出しようかね。
どうやって出るかと言いますと、それはもう飛び降りるしか無いのザマス。さすがのエレーニアちゃんも魔法鍵3つは無理です。なのでバルコニーから飛び降ります。
20メートルの高さから飛び込んだら水面に叩きつけられるって?そんなおマヌケな真似しませんよ。ちゃんと風魔法で結界張りながら重力魔法で落下速度コントロールしますがな。
ではお世話になりまし…なってないかも。さらばじゃ。
「ていっ」
勢いをつけてバルコニーの手摺を飛び越える、そして風魔法の結界。
次に重力魔法で………え、え、え、ええぇぇ!
バッシャーーーーン!!
ゴボボボブクブク………
ジャバーーン、プカリ…ぷかぷか
重力魔法、間に合わなかった。先に魔法かけてから飛び込むべきでした。風魔法の結界は間に合っているので水面衝突時の衝撃も無いし濡れてはいないですけどね。ふう、やばかった。風魔法で岸辺に移動しよう。どんぶらこっこ、どんぶらこ。
チャプチャプチャプ。
ん?
シュルシュルスーーー
なんの音?
ザバザバザバァァァーーーン!
「んぎゃーーー!!……およ?」
ぽーーーん
「今度こそ〈
バッシャーーーーン
ふわりふわふわ、すとん。
「おっし、着地成功!」
体操選手よろしく両手Vの字で着地、グリコって言うな!
え、何があったか全然解らないって?ではご説明いたしましょう。
球体の風魔法の結界の中でぷかぷか浮かびながら岸まであとちょっとって時、イキナリ湖からデッカい魚が大口を開けて飛び出して来た!
体長10メートルくらいありそうな魚、見た目ハンマーシャークみたいな奴。大口開けて私を飲み込もうとしたのだ。しかし結界が魚の口より大きくて飲み込めず、ハンマーの鼻先で吹っ飛ばした。
ちょうどイルカショーのボールのように跳ね飛ばされたのだ。多分20メートルくらいの高さまで跳ねあげられたので《落下速度制御フローティングコントロール》で見事陸地に着地しました。
湖を除くとハンマーシャークもどきがウロウロしてる。
「ふふん、残念でした~」
ザバザバザブーーーン!
諦めて潜っていった。しかしこんな大きな魚(魚?モンスター?)いたのに普通に釣りできてたなんて、運がいいのかな?とりあえずここから一番近い村目指すか。
テクテク歩き出すエレーニア衣瑠は置き手紙の事などすっかり忘れていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます