第3話 幽閉?
ゴトゴトゴト
気不味いです。ひじょーに気不味いです、馬車の中が。4人乗りの馬車に騎士の一人と向かい合わせに座っているのですが、会話が全くないのだ。もう一人の騎士は御者席に座っている。エレーニアちゃんは気不味い雰囲気の中、背筋ピンと伸ばしお淑やかに座っているのだが。こんな所でも崩れない、エレーニアちゃんってばパーフェクトボディ&ソウルww
話しそれた。騎士さんはメイドと同じようにパパンに話をするなとでも言われているのだろうか、視線も合わせてもらえない。説得して塔への幽閉回避しようと思ったが無理っぽい。
王都から領地の塔まで馬車で2日の距離。(この世界は1日24時間、1年365日で12カ月、1週間7日だが月、曜日の呼び名は違う)湖の辺りにある塔は元は戦時代の監視塔だったらしい。領地の中では王都よりの端の方にある。以前行った時は途中の街で宿屋に泊まったが今回はどこにも寄らず野宿である。エレーニアちゃんは貴族のご令嬢なの。庶民衣瑠ならまだ……つっても私も野宿経験はない。アウトドアよりインドア派、キャンプもしないし登山家でもないからね。
食事の時も馬車の中、眠るのも馬車の中、エコノミー症候群になったらどうしてくれる!
唯一トイレの時は外に出してもらえるけど、道の脇に四角い衝立立ててそこでって、小はまだしも大は音と匂いがっ!衝立のそばに騎士が立ってるし。イジメなの!護衛と言う名の見張り……プライベートは?逃げないから野糞は離れたところでお願い~~
…………
よく考えたら風魔法の結界〈
次に問題は食事、昨日はパパンの書斎を出た後そのまま馬車に乗せられて出発したのが10時頃、昼抜きで突っ走り日暮れ前に馬車を止めて夜営。どうもこの道は普段使っている街道とは違うようだ。道幅も狭く他の馬車や旅人とすれ違うことがほとんど無い。
あ、また話しそれた。夕食は日持ちのする固いパンにジャーキー(せめて燻製肉が良かった)とあと根野菜の塩スープ。そして今日の朝も同メニュー。
インベントリに入れた朝食の残りのパンを食べたかったが、出したらインベントリ持ってることバレるし。がまんがまん。
しかし4人乗りの馬車に二人乗りでスペース空いてるよね。ご飯の材料積める余裕あるよね、なぜ?
二日間の馬車旅、準備不足すぎだよ。そして今日も昼抜き。まあ、1日三食は貴族でも家にいる時で旅のあいだは二食ってことはよくあるんだが、それにしてもメニューが泣ける。
今日の夕食は美味しいものが食べれることを期待しよう。
日が暮れてしまいましたが、夕食なしで突っ走り塔にとうとう到着しました。(駄洒落のつもりはないです)
管理人の漁師夫婦が待ってるかと思ったけど居なかった。騎士二人も周りを見渡してたが胸元から鍵束を出して塔の入り口を開けた。持っとったんかい!
騎士の一人がランプを持って先に入った。塔の一階はブチ抜きのワンフロア。調理場や物置用の棚、食事用のテーブルは8人くらい座れる大きなもの、壁際には暖炉もある。窓は締め切ったままだったのか埃とカビの匂いがする。階段を上がると二階の部屋に行くドアと登り階段へ通じるドアがある。騎士が登り階段へのドアを開けるが、右に左に何度か回す。コレ魔法鍵だ。正しい開け方しないと魔法のロックがかかるやつ。
エレーニアちゃんは〈
屋敷の自室のドアは普通の鍵なので〈アンロック〉で外せたんだよね。でもあそこで逃げるよりパパンに交渉することにしたんだよ。結局全然話できなかったが。直ぐに馬車に押し込まれるとも思わなかったし。ヨヨヨ
階段をどんどん登って行く。外周を回るタイプの階段ではなく細かく折り返すタイプで眼回りそう。窓がないし、気分悪くなってきた。確か二階の部屋にも登り階段あったはずだけどこっちとは隔絶しとるのか。
やっと着いた。だいたい5階くらい登ったかな。騎士が扉の鍵を開けるがここも魔法鍵だ。
開けると2畳くらいの前室、正面にまたもや魔法鍵の扉。どんなけ厳重やねん。
扉が開くと中に入るように促される。真っ暗じゃん、あかりはどこよ。
ガチャリ
え?なんの説明もなしで締めよった。おいおい、いくらなんでも酷すぎじゃね?
「〈
燈あかりの魔法を唱え掌の上に現れた光の玉を上に向かってそっと浮かべる。光属性の魔法習得しててよかった。なかったら暗くて泣いてるよ、ほんと。
明るくなった部屋を見回す。掃除はされているみたいだがベッドも家具も質素だ。部屋は6畳くらいかな。窓があるし入り口から向かって正面に大きな両開きの扉がある。ここは鍵がかかってないようだ。
蝶番が錆びてるのか『ギギギ』と音を鳴らして開くとそこはバルコニーだった。三畳くらいの広さがある。手すりから覗くと下は湖だ。このバルコニーは湖面にせり出す感じで作られている。湖面まで20メートルくらい?
高え、高所恐怖症じゃないけどチョット足すくむね。
馬車が去って行く音がするがこのバルコニーからは正面入り口の方は見えない。猟師夫婦の住まいらしきものも村も道すら見えない。湖とその向こうの森だけ。元監視塔って聞いてたけど一体なにを監視してたのか甚だ疑問だ。
三日月が青く、湖面に反射し水面がキラキラしてる。
こんな状態じゃなかったら風光明媚……
ぐぅ~~、キュルル~
お腹すいた~~
瞬く間に時は過ぎ行く……
「お腹が空きましたわ」
独りの時間が長くなると独り言が増える。ボッチあるある………
はあぁ~。この塔に来てすでに3日たちました。誰も来ない孤独な日々。
管理人夫婦も現れません。即ち・・・
「食事が用意されない」
………
………
エレーニアは塔に幽閉後自殺じゃ無くて餓死たったんじゃないだろうか。
春といえどまだ寒い日も多い。特に朝晩は冷え込む。暖炉の横に薪きがあったのでとりあえず凍死はない。ただ着火用の魔道具がないので火魔法習得していなかったら終わるよね。
水。これも眼下に湖はあっても部屋に水差しひとつない。インベントリから入れ物出して水魔法で解決しました。
お風呂。衝立の向こうに盥があったのでコレも魔法でなんとかしました。ただ栓を抜くとそのまま湖に放水、トイレも横にあって水で流して放水、20メートルの高さから放水………水ないとえらいことになる。引っかかったらいやだから〈
アリガタヤ魔法様アリガタヤ。
肝心の食事。コレは全くなにも無い。持って来てくれる人もいない。仕方ないので着いた夜はインベントリの中の朝食の残りのパンを食べた。
2日目、インベントリの中から食べ物を探す。食べかけのクッキーやら缶入りのビスケット、齧りかけの果物などあったのでそれを食す。インベントリ時間止まっててよかった。どうもビスケットやらは10歳頃に掘り込んだようだ。ビスケットに『10歳のお誕生日おめでとう』とメッセージが付いていた。
3日目、インベントリにあった釣り具で釣りが出来ないかやってみた。なぜ釣り具?と思うなかれ。乙女ゲーム【悠久のオルフェ】には釣りバトルがある。当然エレーニアは釣りができるのだ。で、釣れたよ。え、湖に汚物流した?考えない考えない。できるだけ排水口の反対側のバルコニーから釣ったけど。ちなみに釣り具はリール付きの海用っぽい。
釣れた魚はちゃんと捌いて調理しました。【悠久のオルフェ】には料理バトルもある。エレーニアだけじゃなく衣瑠も魚は捌ける。うち両親共働きでしかも母さん料理下手だったのだ。中学の頃から食事は私が作ってた、エッヘン。料理で男の胃袋鷲掴みさ!彼氏いたことないかったけどね。
バトルのせいか料理道具一式から調味料食器までインベントリに入ってた。簡易魔導コンロまで。
カセットコンロサイズで燃料用の魔石をセットしても、魔力流してもどっちも使える高機能タイプ。さすが侯爵令嬢、お金持ち。
魚は三枚におろし塩胡椒ハーブで下ごしらえ後ムニエルにしました。小麦粉があったがさすがに酵母菌や、ドライイーストは無いのでナンもどきを作りました。騎士に貰ったパンより美味しゅうございました。
さて4日目となる今日はどうしよう?
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