第65話 倒せる敵と倒せない敵
「制限時間ありってわけか・・・」
墓石の間が徐々に離れてきた。
飛びついてよじ登って上へと進むピコハンはゴボゴボと音がする下を見て呟く。
底一面に広がっているスライム状のそれは徐々にその体積を増やしているのか徐々に上へと上がってきていた。
間違い無く最初に居た場所は既にスライムの中だろうと理解したピコハンはそれを聞いた。
「BUMOOOOOOO!!!」
野生の動物が上から落下してきてピコハンの横を通過して下へと落ちていった。
それをじっくりと観察するピコハンの目にそれは映った。
スライム状のそれの上に落ちたその猪の様な動物はスライムの表面に留まって暴れる。
獣の叫び声の様な物が響き徐々に沈んでいくその体。
上から見ているピコハンには見えていなかったのだがスライムの中に入ると共にその体は消化され骨だけになっていく・・・
そして、途中で絶命したのか動かなくなった動物はそのままスライムの中へと沈み直ぐに白骨化した。
「おいおいおいおい・・・これはちょっと洒落にならないぞ・・・」
生唾を飲み込みピコハンは更に上へと進んでいく。
そして、ピコハンは横穴を見つけた。
このまま上へと進み続ければこのダンジョンからは出れるかもしれない、だがあの声は試すと言った。
それにこのダンジョンの入り口は何も無い道が続いていた。
最後の墓石から外まで地面だった場所をよじ登って行くのは流石に厳しいと考えたピコハンはその横穴へ向かって墓石を蹴った!
「う、おわぁ?!」
横穴に飛びついた瞬間であった。
また重力の方向が変わったようにピコハンは横穴の中へと落ちていく。
このまま落下すれば底に何も無くても叩きつけられて下手をすれば大怪我をすると考えたピコハンは壁を何度も蹴って落下速度を弱めていく。
「無茶苦茶だなこれは・・・」
そして、底が見えて体制を整え底へと着地した。
壁を何度も蹴り返して落下の衝撃を弱めていたから苦も無く着地できたピコハンだったが・・・
「うぉっ?!」
ピコハンは横に飛び退いた。
ピコハンが落ちてきた穴から先程のスライムが流れ込んできたのだ!
「ちょっと、マジかよ?!」
そのまま道の奥へと走り出すピコハン、穴からはドロドロと先ほどのスライムが流れ込みどんどん広がっていくのだから仕方あるまい。
それでもスライムが広がる速度よりピコハンの足の方が速いのは当たり前で少し距離を取ったところでピコハンは後ろをチラチラ見ながら走る速度を弱める。
直後!
「うわっ?!」
顔に何かが当たったと思ったらそれがパンっという音と共に破裂したのだ!
特にこれといったダメージが在るわけではないのだがそれに驚いたピコハンは頭上へ視線をやる・・・
すると天井にはビッシリとそいつがへばり付いていた。
体調は10センチほどの白い浮遊する生物、クリオネにそっくりなそいつはゆらゆらとピコハンの方へ向かって飛んでくる。
「なんなんだこいつは?」
そのピコハンの頭を目指して飛んできたクリオネ風の生き物を手で払うと手が触れた瞬間にそいつはパンッと言う音と共に破裂した!
手に伝わる小さな衝撃は少しの痛みを感じたがピコハンにとってはそれどころではなかった。
1匹が破裂したのを合図にクリオネ達は一斉に天井から離れてピコハンの方へ浮遊を始めたのだ!
「ちょっ!?この数は流石に不味いぞ?!」
身長が低いピコハンは中腰になり更に身を低くして一気にその通路を駆け出す!
その先でも延々とクリオネ風の生き物は天井に生息しておりピコハンを視界に捕らえると共に襲い掛かってくるのだ!
走るピコハンの追いかける浮遊するクリオネ達。
それでもピコハンの方が早いのは当たり前でそのまま走り続けると再び走っていた方向に重力方向が変化した!!
「だろうと思ったよ!」
それを予想していたピコハンは壁を蹴った衝撃で回転し足から落ちる姿勢をとる。
次に着地した場所は広い大広間であった。
とりあえず先程と同じ状況を想定しピコハンは横へと飛びのく。
その直後ピコハンの予想通り落下してきた穴からクリオネ達が落下をしてきた!
更に広間の天井に開いた小さな穴からスライムがどんどん流れ込んできて部屋の中央にその体を集めていく。
「おいおいおいおい・・・こんなんどうしろっていうんだ?」
見る見る目の前で巨大化していくスライムと穴から次々と途切れる事無くやってくるクリオネ達。
徐々に巨大化するスライムの周りを時計回りに走りながらピコハンは飛び掛ってくるクリオネに向かって拳を突き出す!
パパパパンッ!!!
拳が触れて破裂した衝撃で更に別のクリオネも破裂して連鎖的に数匹が巻き込まれた!
繰り返せばクリオネはなんとかなりそうなのだが目の前で巨大化し続けるスライムをどうにかしないといずれこの部屋がスライムで埋め尽くされる・・・
そう考えたピコハンは思考により動きが遅くなりそこをクリオネが通過してきた!
「うわっ!」
気付けば顔面のまん前に居たクリオネが顔面で破裂するのを避ける為にピコハンは体を捻って地面に転ぶ。
顔面を攻撃されたら視界がどうなるか分からない、それを恐怖したのだ。
だが幸か不幸か偶然にも避けた時にクリオネにピコハンの肩が当たったのだ。
だがクリオネは破裂する事無くその体をフワリと浮かせて再びピコハンの方へ動き出す。
(なんだ?今、確かに当たったんだけど・・・服か?)
そう、クリオネが破裂するのはピコハンの皮膚に触れた時である。
それに気付いたピコハンであるが、倒すだけなら何とでもなるクリオネよりも目の前で今もその大きさを広げているスライムである。
「こいつをなんとかしないとな・・・」
その時であった!
何とスライムがその体の一部を伸ばしてピコハンへと攻撃を仕掛けてきたのだ!
一見するとまさしく触手と呼ばれる形状のそれをピコハンは驚きながらもかわす。
「こ、こいつ意思があるってのか?!」
その触手は伸びた状態で直ぐにピコハンの方へ方向転換し先端を伸ばしてくる。
前に進んで距離を縮めたいのだがその触手攻撃は収まるどころか更に激しさを増していく・・・
その間も頭上を飛ぶクリオネ達はピコハン目掛けて飛んでくる。
部屋が広いことが幸いし逃げる事は出来るのだが、そこからどうする事も出来ないという事実を逃げながらピコハンは確認していた。
別の横穴はなし、入ってきた穴は天井で次々と止まる事無くクリオネが出てくる・・・
ピコハンは一か八かスライムに直接攻撃を行なうのであった・・・
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