第55話 新たなるダンジョン、いきなりボス?

実に15年ぶりとなるダンジョンの入り口は昔と何も変わっていなかった。

ただ中から色の付いたロープが伸びている事意外は・・・


「これは一体?」

「これもクリフの研究の成果よ」


アリーの言葉に視線を向けるとクリフはドヤ顔で説明を始める。


「ダンジョンは入る度に中が変化すると思われてましたがそれは僕の研究で間違いだと証明されました」


そう言いクリフは数本在るうちの赤いロープに手を伸ばす。


「このロープはダンジョンに生息する魔物の毛を使って作られています。そしてこのロープを伝いながら中に入ればこのロープの先と同じ場所に繋がるのです」


これもクリフの発見した事実の一つであった。

共に中に入る時は同じところへ出るのに一度出て再び入ると違う場所に行ってしまうのを不思議に思い研究した結果この法則を発見したのだ。


「それじゃアリー行きますよ」

「えぇ、ピコハンもロープを伝いながら一緒に来て」


クリフが先導しその後ろにアリー、ピコハンという順で赤いロープを伝いながらダンジョン内へ入っていく。

中に入って直ぐにピコハンはそれに気が付いた。

手にしている赤いロープの直ぐ横にあった数本のロープはいつの間にか消えていたのだ。

勿論後ろを振り返ってもダンジョンの外にそんなロープは見えない。


「ピコハン、一応まだロープは放さないでね」

「あ、あぁ・・・」


驚きすぎてあいまいな返事をするピコハンは直ぐに気を引き締めなおして前へ進む。

既にそこはダンジョン内、いつどこから何が襲い掛かってくるか分からないのだ。

しかし、地面に打ち付けられた赤いロープの先端まで辿り着いたクリフはその手を離してそのまま前へ進む。

それに続いてアリーも散歩するかのように歩を進める。

その姿にピコハンは周囲の警戒を強くした。

ダンジョン内でそんな無警戒な行動は命取りだと理解しているからだ。

だがそんなピコハンの様子をクリフは振り返って見て話す。


「ピコハンさん、そんなに警戒しなくてもここには魔物は出てきませんし罠も在りませんよ」

「そ、そうなのか?」

「えぇ、この先の扉までは確認済みですから」


そう告げたクリフは再び足を進める。

それに続くアリーを見てピコハンも警戒心を一段階下げて歩を進める。

5分くらい奥へ進んだ所にそれは在った。

高さが2メートルを超える大きな扉である。

そこで行き止まりとなっていた為、進むべき道はその扉の向こうにしかないのは見ての通りであった。


「それじゃ作戦を説明するわ、この奥には石の魔物が居るの。私はそいつと戦うからピコハンはそいつ以外の雑魚を何とかして頂戴」

「石の魔物?」

「えぇ、人間を模った様な石の魔物よ。そいつと一緒に小さな石の魔物が4匹出てくるからそいつをなんとかしてくれれば良いわ」

「分かった」


扉の前で作戦会議をするアリーとピコハンをクリフは何かの準備をしながら見詰める。


「もしもやばそうだと判断したらこれを投げ入れますから合図したら直ぐに扉の外へ逃げて下さい」


そう言ったクリフが手に持っていた黒い玉をピコハンは見る。

煙球みたいなものだとクリフは説明しアリーも頷いていた。

ピコハンもその言葉に頷き深呼吸をして扉の前に立つ。


「僕は戦闘要員ではないのでここで待機します。あの石の魔物はこの扉を出れないみたいなので無理だと判断したら直ぐに戻って下さいね」


クリフがそう言いアリーが扉に手をかけた。

ゴゴゴゴっと言う大きな音と共に開いた扉の中へアリーとピコハンは入っていく。

その中は真四角の空間で一面が40メートル程あり、その中央にそいつは居た。

地球人がそれを見れば間違い無くそれを『地蔵』だと言うであろうそいつはピコハンとアリーが扉を潜ったのと同時に動き出した。


「それじゃ行ってくるからピコハンは雑魚をお願いね、絶対に無理はしないでよ」


そう一方的に告げたアリーは背中に背負っていた石刀の様な物を手にして駆け出す!

それと共にピコハンも周囲を警戒して構える!


「ピコハンさん!上です!」


扉の外からクリフが叫ぶのとピコハンの頭上に3体の小さな地蔵が降ってくるのはほぼ同時であった。

これにはクリフも予想が出来なかったらしく慌てていたのだがピコハンは降ってきた小さな地蔵を空中で捕まえて残り2体の盾にして奇襲を防いだ!


「へぇ、ならアタシはこいつとタイマン張らせてもらうよ!」


そう言って横目でピコハンを見たアリーは地蔵に石刀を振り下ろした!

その攻撃は地蔵が横に動いた為、肩に当たりその肩の部分を削る!

それを見てアリーはいける!と判断する。

刃物では先にこちらの武器が駄目になり、鈍器では地蔵の動きが早くて攻撃を当てるところでは無かったのでアリーは考えて石で刀を作ってもらったのだ。

鈍器よりも軽く刃物よりも切れないが打撃としての攻撃力は上、そんな武器の手応えにアリーは笑みを浮かべながら地蔵が伸ばした手をステップで横へかわすのであった。

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