第38話 ワニとの車両での死闘
先頭車両から4両目へ飛び移りピコハンは屋根の上を駆ける!
その後ろを匍匐前進の様に四つん這いで追い掛けてくるワニ!
車両と幅が同じくらいで横に抜ける事は不可能だとピコハンは判断しとにかく後部車両へ駆けて行く!
「最初から屋根の上通れば苦労しなかったな」
ワニに追われながらも屋根の上には血管も水も人影も無く真っ直ぐ駆け抜ける事が出来るのを見てピコハンは呟く。
倒しても自身が強くもなれず何も素材が残らないので旨味もなく疲れるだけなのだから仕方ないだろう。
途中のワニに壊された車両もいつの間にか元通りに修復されておりその上をピコハンは駆ける!
ワニのピコハンを追う速度自体は本来それ程早くは無いのだが、やはり進んでいる車両の上を後ろへ向かって走っているので風を受けて速度が上昇しているのだろう、ワニの動きは予想以上に早かった。
「正面から殺り合うのは不利だな、どうするか・・・」
ピコハンは考えながら3両目に飛び移り更に駆ける!
横は奈落の様に何も見えず車両から飛び降りれば一体どうなるのか検討も付かない、落下し続けるのか見えない床が在るのか・・・
「確かここは人影の車両だったな・・・」
ピコハンは横に飛び屋根に手を付いて透明石を蹴り破り車両内へ飛び込んだ!
それを見てワニも天井に歯を立て車両を無理やりはがして中へ飛び込んできた!
全身が車両の幅と同じワニは相変わらず無理やりその巨体を車内へ突っ込む!
「これならどうだ!」
ピコハンは自分に襲い掛かろうとしている人影の腕を掴んでワニに向かって投げつける!
だがそんなモノが顔面に当たった所でダメージなど在るわけも無くワニは車両内を無理やり進行してくる!
次から次へと出てくる黒い人影が埋め尽くす中、ピコハンはその影を次々とワニに向けて投げつける!
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
ダメージは無くとも皮膚が溶けているので痛みを感じたのであろう、突然叫びを上げて大きく開けそのまま口で車両内を再び食い尽くす様に突っ込んでくる!
「それを待っていた!」
ピコハンは横へ飛び車両の透明石を蹴り破り上側に手を付いて逆上がりの様に屋根の上へ再び移動する!
車両内をドアまで一掃したワニは口を閉じ中にピコハンが入っていない事を理解し屋根を突き破って上へ追い掛けてくる!
しかし、その瞬間こそがピコハンの狙いであった。
天井を突き破ったそのワニの右目目掛けてピコハンは残りの1本のクナイを投げつけていたのだ!
口を大きく開けて車両内を全て喰らい尽くす様に進むワニは勿論前方が見えていない、そしてそこにピコハンが居ないと判断したら屋根を突き破って出てくるのは想像に容易かった。
その瞬間を狙いピコハンを見つけようと目を向ける時を狙ったのだ!
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
右目に突き刺さったクナイの痛みに絶叫を上げワニはそれでもピコハンを押し潰そうと突き上げた顔面を屋根へ叩きつけるように四つん這いの姿勢に移行する。
その時には既にピコハンは次の車両へ飛び移っており、押し潰される事は無かったのだが一撃を加えた事で気を抜いてしまった。
四つん這いになったワニはそのまま前に突っ込んで来たのだ!
「おわっ?!」
動いている物の屋根の上に居るわけであるので常に風に晒され車両の振動に安定していない重心。
もしもしワニ以外の攻撃を受けた場合を考え警戒していたピコハンはその突撃をモロに喰らってしまい吹き飛ばされる。
前に進んでいる車両の屋根の上で後ろへ向かって突き飛ばされればその勢いは加速し一気に最後尾車両の屋根の上にまで飛んで屋根の上を転がるピコハン。
それをチャンスとばかりになんとジャンプをして上から襲い掛かるワニ!
その巨体がピコハンを上からプレスするように襲い掛かる!
転がる勢いを利用してしゃがんだ状態に移行したピコハンは自分の真上に迫るワニを回避する事が出来ずそのプレスをモロに喰らってしまう。
「うがあああああああああああああああああああああ!!!!」
天井を突き破りピコハンは車両内にワニごと落ちてその床に押し潰されそうになるが最後尾車両内には座席が左右にあり、それがピコハンを押し潰す前にワニにとっての抵抗となり少しだけの猶予が出来た。
ワニの体当たり自体も腕をクロスししっかりと防御していたのだ。
結果、ピコハンは完全に潰される前にワニの下から少しだけ床を滑り抜け出せた。
まさに間一髪であったがワニは一切の油断をしていない。
自身も衝撃でかなりの痛みを受けている筈にも関わらず口を大きく開けてピコハンを再び喰らおうと迫る!
だがそのワニの動く音に反応してワニの体が傷つけられた!
そう、最初の車両には音に反応して攻撃してくる水が居たのだ!
ピコハンが落下した時に転がってワニと距離を開けたのだがその時に同時に座席を破壊しながら落下したワニの方が音を大きく出しており、水はピコハンを無視してワニに攻撃を仕掛けたのだ。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
普段なら水の攻撃なんて全く効果が無かったのかもしれない、だが今のワニは全身あの赤い液体のせいで溶けている。
その皮膚に水が次々と襲い掛かり切り付けその痛みでワニは奇声を上げる!
そして、その音に反応し水はワニを攻撃する!
その水を暴れて押し潰しても飛び散った場所から再び手が生えてきてワニに襲い掛かりワニは全身を次々と切りつけられる。
そして、その水の攻撃が残っていたワニの左目に攻撃を仕掛けてワニの両目が遂に潰された!
「GYAGYAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
痛みと視力が完全に無くなった事でワニは遂に特攻に出るしかなかった。
視力が無くなると言うのは人間に限らず相当の恐怖を与えるものだ。
特に今のワニは自分の叫びや動く事で発生する破壊音で今も水による攻撃を受け続けている。
その状況下で唯一分かる事は自分が目を失う前に見たピコハンが自分の正面に居る筈だと言う事だ。
なのでそれしかなかったのであろう、屋根の上で見せた物凄い勢いで一気に突っ込む特攻をその車両内で行った。
地震の体を少し浮かしながら左右の壁を破壊しながら勢い良くワニは最後尾へ向けて突っ込みその破壊できないドアにぶつかりそこで口を思いっきり閉じる!
口を大きく開き全てを喰らいながら突っ込む特攻を行なった結果、勿論口内にはあの水が入っている。
それでも構うものかとワニは口を閉じて全てを噛み潰す!
だが口内にピコハンの食感は無かった。
ピコハンは突っ込んでくるワニが来る前に先程と同じように屋根の上へ飛び出し退避していたのだ。
最後尾のドアにぶつかったワニは目が見えない、だが先程と同じように逃げ道は屋根の上にしかないだろうと言う事を理解していたのか、そのまま真上に口を開いて天井を喰らいながら屋根の上へ頭部を突き出した!
丁度その部分、ワニが最後に喰らった天井はピコハンがこの車両内へ来るのに通った空間が繋がった出入り口であった。
其の為、そこを喰らい潰したワニの口内で突然大量の岩があふれ出し頭部を突き出したワニはその場で口を開いて口内から次々と岩を車両が通り過ぎた場所へ吐き出していく。
その岩が車両が通過した場所へ転がり落ちて地面に音を立てて転がる光景をピコハンは確認し地面が在る事を理解した。
そして、頭部を突き出したワニの眉間目掛けて女王蟻の剣を突き出してそのまま体当たりを行った!
どぶしゅっ!!!
「GYAAAAAGYAAAAAAAA!!!!!」
見事に剣はワニの眉間を貫きその痛みでワニはその場で暴れだす!
頭部だけ出していた状態で暴れたのでそのまま車両内に体を戻せばよかったのだがその間も水による攻撃を体に受けていたのかもしれない、ワニはそのまま車両の上へ飛び出したのだ!
そのワニの飛び出したのは最後尾の反対側の車掌室と思われる小さい部屋の真上、もちろんその先に屋根はない。
だが視力をなくしていたワニにはそんな事は分からない、そのまま屋根に手を付こうと四つん這いの姿勢に移行しようとしてその両手は空を切って車両から後ろへ落ちる!
暴れるワニの眉間に剣を突き刺したまま耐えていたピコハンだったが車両から落下するのを理解したと同時に剣を抜いて車両へ向けてジャンプする!
慣性の法則により動いていない場合と同じ様に風の抵抗は受けるが、後ろへ落ちているワニの頭部からジャンプしたピコハンは予想していた場所よりも風に押され元の場所へ届かないのを理解した。
「くそっ邪魔だぁあああああ!!!」
両手で女王蟻の剣を車両の橋にでも突き立てて助かろうとしたのだがその体の真下にはまだワニの尻尾が残っていた。
ピコハンはその先端に女王蟻の剣を突き刺しそのまま運転席と思われる場所の屋根に激突し破壊してその中へ飛び込んだ!
完全に偶然であった。
運転席から透明石越しに外が見えるようにそこは透明石が貼り付けられており、そこにワニの尻尾は突き刺さる!
これが切断されていたのならまだワニにとっても良かったかもしれない。
だが尻尾の中に骨が在ったのかどうか分からないがワニの尻尾は切断されずその運転席を破壊しながら突き刺さっている女王蟻の剣と共に引っ掛かった!
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!!!!!
ワニの尻尾が車両に固定されている為、走っている車両から落ちたワニの体は胴体が地面に引きずられ何度も何度も跳ねながらその体を削られ血を撒き散らし肉片を飛び散らせ崩壊していく・・・
ピコハンは尻尾が偶然にも引っ掛かったその場所からそれを眺める・・・
闇に包まれていた場所に飛び散る肉片と血が通過した場所に残されてその車両がそれほど早い速度では動いていないのを理解した。
それでも尻尾を固定され引きずられ続けているワニがどうあがいても自身の尻尾を切断する以外にその状況から助かる術は無いのは明白。
そのまま数分も経過しないうちにワニの体は全て削り取られ残されたのは尻尾のみとなりピコハンは遂にワニに勝利したのであった。
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