第30話 洞窟内へ突入!
「ガキ一人か…人捨てに遭ったのか?」
盗賊達のアジトである洞穴、そこの入り口で見張りをしている男がピコハンの姿に気付いた。
数時間前に村を襲いに行った仲間が収穫なしで帰って来たんで男は機嫌が悪かった。
食料を持ち帰る筈だった仲間が子供が強かったとか意味不明な事を口々に叫んでいたので飯も食えず仕舞いなのだ。
「女なら使い道もあるんだが、なっ!」
男は構えた弓からピコハンに向けて矢を放つ!
本来なら複数人で見張りをするのが普通なのに今はこの男一人に見張りをさせているのはその腕を買われていたからだ。
真っ直ぐにピコハンの眉間めがけて飛んだ矢を見て男は殺ったと確信する!
だがピコハンに当たった筈の矢はまるで存在しなかったかのように突如消えたのだ。
「あれ?」
まるで飛んでるハエを目で追っていたら突然消えたみたいな感覚に男は陥った。
当たったと思ったらズレて外れたのかと思いもう1本矢をセットして再び放つ!
「今度こそ!」
再び、矢はピコハンに当たった筈なのに忽然と消え去る。
その不思議な現象に我が目を疑い目を擦る男・・・
それが失敗だった。
見張りとして近くに現われた人物から目をそらしてしまったのだ。
「えっ?」
男が視線を向けた時には既にピコハンの姿が無かったのだ。
ここで全体を見回せたらピコハンを発見できただろうが、この見張りがそれなりに腕が立つのが仇となった。
空間予測と呼ばれる事を無意識に行った為にピコハンを完全に見失ったのだ。
これは先程までのピコハンの動きからこの辺りに居る筈と予測を立て、それ以外の場所に視野を向けなかったのである。
「がっ?!」
見た目は10歳の男の子であるがピコハンの身体能力は異常である。
物音を殆ど立てず既に大きく迂回していたピコハンは門番の見ていた左側から一気に近付き首の後ろをトンッと叩いて気絶させていた。
極限まで手加減しないと下手したら相手を殺してしまう可能性があった為ピコハンはかなり気を使った。
その結果、無事に予定通り意識を狩る事に成功したのだ!
「さて、それじゃあ・・・うひっ」
見張りの男をそのまま近くの草むらへ引きずり込み共有箱を組み立てる。
そして、見張りの男の下着以外を全て共有箱に放り込んだ。
「よし、素材の剥ぎ取り完了!」
まるで魔物を狩った冒険者の様な独り言を言いピコハンは最後に下着を近くの木に括り付ける。
その異常な握力により木から離れようとするならば下着を切らないと駄目な状態にしてピコハンは洞窟の方へ向かう。
入り口で一応中を確認しながらピコハンはゆっくりと中へ足を踏み入れた。
ここで予想外に役に立ったのが火の女神から貰った火の加護であった。
気配ではなく体温を察知する事が出来るので真っ暗な中で誰かが潜んでいたら気付けたのだ。
「ぐえっ?!」
岩陰に隠れて座り込んでいた男を同じく首の裏トンで気絶させ共有箱を組み立て下着以外を全て放り込む。
そしてやはり下着をピコハンの強靭な握力の指で穴を開けた岩肌に縛りつけ外の見張りと同じ状態にしてピコハンは奥へと向かう。
「人数が多いな・・・」
目では見えていないが気配と体温でその場所の奥に複数人の男が居るのが分かった。
その角を曲がった所が盗賊達の本拠地なのだろう。
ピコハンはその角の手前で金貨を数枚懐から出してそっちへ転がす。
倒れた金貨は小さな音を立てて倒れ一番近くに居た二人がその音に気付き、ライトに照らされた光が反射した事でその金貨に気付いた。
何故こんな所に金貨が?そう考えればピコハンの事にも気付いたかもしれないが、単なる盗賊である男達にそんな思考は無かった。
「ちっと用を足してくるわ」
「ひひっ俺も」
金貨に気付いた二人が外に出るついでに金貨を拾って歩いてくる。
ピコハンは岩陰に隠れて男達が通り過ぎるのを見送り、奥へ音が届かない場所まで来た所で同じく後ろから首の裏トンで意識を刈り取る。
「素材取り素材取り♪」
嬉々して男を脱がして共有箱に衣類を入れていくがこの衣類はハッキリ言って何の役にも立たないだろう。
雑巾に使うにも臭いが酷いので焚き火に使うくらいしか使い道は無いだろう。
とりあえず相手を無力化する為に相手を殺しはしない優しいピコハンであった。
「残りは・・・6人か・・・」
角まで戻りその場所に屯する男の数を確認したピコハンは思い切って飛び出した。
これが警戒している相手なら対処されたかもしれないが盗賊達はピコハンの足音を外に言った仲間が戻って来たのだと勘違いしたのが運の尽きであった。
「うげっ!?」
「あぎゃっ?!」
「ほげっ!?」
瞬く間に3人を無力化したピコハンは4人目に向けて走り出した時に危険を感じ後ろに飛んだ。
丁度そこに液体が蒔かれていた!
「お、お前は?!」
液体の入った入れ物を持つ男がピコハンの姿を見て声を上げる。
そう、帰った時に村に襲撃を仕掛けていた男だ。
「あ~あ見つかっちゃった」
まるでかくれんぼをしているような口調のピコハンに恐怖を覚える3人の男。
見た目10歳の男の子なピコハンだが3人共その実力は知っていた。
特にここまで仲間が居た筈なのに来ている事で更に恐怖が増大する。
「い、いくら強くてもこんなガキ一人にやられてたまるか!」
一人が恐怖に耐え切れず飛び出した。
手にしていたのは木を削って作った棍棒である。
剣と打ち合っても斬られる前に相手の剣を折る為に作られた棍棒だったが残念な事にピコハンは素手であった。
「えっ?!なっ?!」
世界が回るような視界に混乱した男はピコハンに投げ飛ばされた事に気付かぬまま頭から落とされ意識を失う。
「ば・・・化け物め・・・」
残った男の呟きも仕方ないだろう、ピコハンの動きがライトの光のせいもあるが見えなかったのだ。
気付いたら男が回転して地面に落とされていた。
だが親玉の男は諦めてはいなかった。
ピコハンがゆっくりと歩いて近寄るのを怖がった振りして見ている・・・
(あと2歩・・・1歩・・・今だ!)
親玉と思われる男は口に含んでいた酒をピコハンに吹き掛けると共に目の前にタイマツを出した!
吹き付けられた酒に引火した火はそのままピコハンの方へ向かって飛んで行き最初に足元に蒔かれた液体に引火した!
ここが洞窟内でこんな場所でそんな攻撃をすれば一酸化炭素中毒も視野に入れないと駄目なのだが盗賊達はそこまで考えていなかった。
炎がピコハンの足元から燃え上がり顔を両腕で隠したピコハンを炎が飲み込むのであった。
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