13
◇ ◇ ◇ ◇
……ふぅ。お腹いっぱーい。
「ごちそーさまでしたぁー」
両手を合わせて一礼。大変美味しゅうございました。我、大変満足よ。
「じゃあ、俺は広間に戻る」
「ならー」
「待て」
あぅ。なんですか、なんなんですか。
鼻先を夏生さんの大きな手で押され、立ち上がった
「お前は東の屋敷に先に戻ってろ。元老院の連中に送るよう頼んであるから」
「えー」
「えーじゃない。俺の言うことは?」
「ぜったい!」
「よし」
……ん? これって私、言うこときくってことで話終了した感じ?
それこそ、えー、ですよ。いや、きくよ? きくけどさ。今のは反則だと思う。
「お待たせしました」
「ほら、迎えが来たぞ」
「むぅ」
食堂の
抱っこするからおいで、と伸ばされるコリン様の両腕に素直に手が伸ばせないのは、勝手にすっぱりと話を切った夏生さんへの少しの反抗心と、そんなに慣れていないコリン様への気恥ずかしさだ。
これが東とか南の人達だったらすぐに手を伸ばしてる。綾芽とか、劉さんとかだったらもう本当に秒だ。むしろ椅子から降ろして欲しい意味もこめて、こっちから手を伸ばしにいってる。
それに、よくよく考えたら、私の最近の移動手段。誰かに抱っこしてもらう比率が格段に上がってる、気がする。いや、確かに楽だよなぁとは思うけど。本当に疲れた時とかネタで抱っこを
この身体だから忘れられてやしないか心配だけど、私、十六歳ぞ。子供の体力の限界が来て歩けなくなるまでは、ちゃんと一人でも歩ける。なんなら宙にも浮ける。まぁ、結局お腹が空くし、怒られるからやらないけど。
うん。だから、何が言いたいかって言うと、早々に小さい子供扱いはしないでもらいたいんだけどなってこと。
……って、いつも思ってるはずなんだけど。
「そうだ。治療のお手伝い頑張ったみたいだから、これをあげよう。潮様からいただいた野イチゴのクッキーだよ。今なら、この袋ごと」
潮様といえば、元老院に少しの間滞在していた時にお世話になった、お料理がとても上手な人だ。特に、手作りお菓子はもはや絶品の
コリン様が腰につけていたポシェットから小袋を取り出し、さらに袋をあけ、中から一枚取り出して見せてきた。食べ物に関しては犬並みだと、どこぞの某料理長さまに毎度言われる私の鼻に美味しそうな匂いが
自然と
「あのぅ、それ、なんまいはいってますかね?」
「何枚だろうね。一度にじゃなくて、何回かに分けて食べるといいよ」
「おい」
「あとあとっ、のいちごって、いちごとおんなじあじですか?」
「おいこら、お前。頼むから、食い物につられるの、本気でやめろ」
「ん?」
いつの間にか、私の身体はコリン様の腕の中にすっぽりおさまっていた。大成功とばかりに微笑むコリン様の後ろで、夏生さんが額を押さえて天を仰いでいる。
……なんとまぁ。不思議だねぇ。
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