9
皆が顔を見合わせて、誰が話すかそれぞれ様子を
「境目とはなぁ、こちらとあちら、そなたが今暮らしているこの世と伊邪那美様がお過ごしになっておられるあの世の境目のことよ」
「……」
……えぇっと、つまり、なんだ?
めっちゃヤバいことですやん!
「あ、あやめっ!?」
大丈夫なの!? えっ!? 私、頑張るとこ? むしろ、頑張らなきゃいけないとこ!?
なんで皆そんな
「自分より慌ててはる人見とったら冷静になれるって、ホンマやねー」
「おい、落ち着け。そして、そこから下りろ」
「あ、あい」
鳳さんから神様のお膝から下りろと言われればそれに否やはない。早々にずり下りて元の定位置に戻った。あぁーって残念そうな溜息声が背後から聞こえてきたけど、今はそれどころじゃないんだから無視だ無視。
「具体的にどこで発生しているものなのか、我々に教えていただけないでしょうか」
「ふむ」
鳳さんを始め、皆に頭を下げられた神様が私をチラリと見てきた。けれど、私に何か言うことはなく、鳳さんに対していいだろうと頷いて見せた。
誰かの口からホッと安堵の溜息が漏れ聞こえてきた。
いくつかの場所の名前だろう箇所を神様が口にすると、帝様を始めとして皆が
「まぁ、事が事ゆえに元老院も動くことになる。そう心配するようなことにはならぬだろうよ」
「ほんとうですか?」
「あぁ」
「……よかったぁー」
あぁ、安心したら身体から力が抜けちゃった。
「ただ」
「ん?」
「そなたは色々な者に目をつけられておるなぁ」
「へ?」
目をつけられるって良いことじゃない、よねぇ?
最初がオネェさんで、その次があの男、皇彼方! それから奏様大好きお兄さん。それから……伊邪那美様。最初と最後はアノ人のせいでもあるんだけどなぁ。後はまぁ、私の中では数の内に入らない、入れたくない人達もいることにはいるけど、その人達のことはどこか
「……どういうことです?」
「いや、深い意味はない。思ったことを言っただけだ。気にするな」
「……」
綾芽は神様の言葉を納得できない様子で眉を
「ではな。雅、また社に遊びにおいで」
「……あい」
神様はニコリと笑うと、
神様がいなくなり、大広間に今の今まであった緊張の糸がプツリと切れたかのように皆が
本来なら
「ちょっと」
「ん?」
綾芽がわざわざ私の方に身体ごと向き直ってきた。
おっと。この体勢はお説教らしいですよぅ。……なにゆえ。私、何も悪いことしてないのに。
それでも条件反射というか、状況反射というか。私も綾芽の方を向いて座り直した。
「誰かに目をつけられるようなことした覚えは?」
「ない! ……こともない」
「……自分が知らんヤツもおるいうこと?」
「んー。わかんない」
「ホンマやろなぁ?」
「ん」
「嘘ついたら」
「はりせんぼん!」
「ちゃうでー。夏生さんと巳鶴さんのお説教、プラスで里帰りした時に自分のひいおばあちゃんのお説教コースや」
「しんじゃう!」
「いや、あのね、雅ちゃん。針千本も普通は死んじゃうからね」
蒼さんから苦笑交じりで冷静なツッコミいただきましたー。
でもね、違うんだよ、蒼さん。精神的苦痛は肉体的苦痛を上回る時があるということをご存知ではない? ご存知でないなら、それはとても幸せなことだよ。
一言で言おう。
「何かあったら即報告。はい、復唱しよし」
「なにかあったらそくほーこく!」
「忘れたらあかんで」
「あい!」
手をピシッとかかげ、元気よくお返事させていただきました。
だあって、ほら、目がさ、笑ってなかったんだもの。これ、少しでも面倒だなぁって思ったりしちゃったら、正座でさらにお説教時間追加が待っているヤツでしょ? そんなのごめんだ。
綾芽ってば、いつもはだらけてるのに、こんな時ばっかりスイッチ入るんだからなぁ。
……言うことはきくけどさ。
帝様によしよしと頭を撫でられ、ちょっぴり気分が持ち直せる私は単純だと自分でも思う。
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