8
桐生さんがお昼を用意してくれているというので、広間に集合した私達。
今日の
前にお屋敷に置いてもらってた時に準備してもらった前かけをつけ、準備万端!という時。
「……そういえば、なつきさんたちはー?」
一緒に来てるかと思っていた人達が
綾芽は当たり前のように隣だし、帝様もその反対隣。橘さんと鳳さん、凛さんは向かい側。蒼さんと茜さんは向こうでおじさん達の輪に入っている。奏様と響様は
「夏生さんらは夕方にならんと来られへんやろなぁ。言うて今回は南が主導やし、自分らはあくまでも補佐やから」
「ふーん。じゃあ、あやめはきてだいじょーぶなの?」
「なーんも心配あらへん。ちゃあんとお仕事してきたわ」
そのちゃあんとが信用できないって毎度夏生さんに言われているのを聞いている身としては、そっかーと素直には思えないわけでして。きっと今頃綾芽を探している人がたくさんいそうだ。
それでも綾芽が一緒の
「ほら、早よ食べ」
「あい」
そう言って私に先を
「……」
ハムスターみたいにもっもっと食べていると、正面から熱い視線を感じた。凛さんがじぃっとアノ人と同じような無表情でこちらを見てくる。見てくる。めっちゃ見てくる。
……何ぞ?
「りんさん、どしたのー?」
「……」
視線に耐えきれなくなって、とうとう聞いちゃった。
なになにー? 可愛すぎて見とれちゃったー? うふふー知ってるー。
……嘘です。冗談です。調子に乗りました。こめんなさい。
「どうした」
隣に座る鳳さんの声にようやく反応を見せた凛さんは、フルフルと首を振って見せた。ほんのちょっぴり残念そうでもある。
「リス」
「……うん?」
後に続くかと思った言葉は続かない。
けれど、付き合いの長い皆はそれで分かったらしい。
「東になら瑠衣さんが
「あれか。うむ。あれは良かったな。だがなぁ、同じ着ぐるみでもまた違うだろう。楽しみにしているぞ」
んん? もしかして……これのこと?
着ているパンダの着ぐるみの
そういえばこれ……どこにもタグが付いてない。もしかして……いやいや、まさかねー。
うんうんと頷きながら帝様が凛さんに目をやる。凛さんはグッと両手の拳を胸の前で握って見せた。
……なんだか分かんないけど、私は何もしなくてオッケーってことでいいんです、よね?
「気にせんでえぇから」
綾芽にそう言われたので、再び目の前のご飯と向き合わせてもらえました。
ちょっと気になるけど、今はこっちが大事!
今日も今日とて美味しいなぁ。
「ぷはーぁっ」
食後のお茶まで飲みきり、お腹をポンポン叩いてみる。着ぐるみだからパフパフと
お腹いっぱいか?と聞かれたので、はち切れそうと答えたら綾芽にお腹をぷよぷよと
「どれ」
お返しだと綾芽のお腹も突っついて遊んでいると、横からひょいっと
「なっ!」
「……なんで、ここにおるんです?」
「はっはっは。遊びに来てくれなんだからな。来てみた」
「来てみた、て。自由すぎるんちゃいます?」
どこで覚えたのか、ウィンクもどきを投げてくるのは、狩衣姿の神様だ。青龍社の。でも、残念なことにウィンクはもどきであってウィンクではない。もう片方の目も超がつくほどの薄目。私はそれをウィンクとは認めません。
私と綾芽、帝様の背後にいきなり現れたかと思えば、当たり前のように腰を下ろしている神様に、目の前にいた橘さんは絶句し、鳳さんと凛さんは無表情を貫いた。
周りのおじさん……お兄さん達も身体を強張らせて緊張している。まぁ、無理もないよね。ただでさえ帝様が同じ屋根の下、同じ部屋にいるっていうだけでも緊張感ありありなのに、それにつけて他の土地とはいえ神様が現れたんだから。
「あいも変わらず
頭を撫でくり回してくる神様はしばらく私を撫でくり倒し、満足したのかフゥっと息をついた。
「……」
……え? 何しに来たの!?
「ホンマは来てみただけやないですやろ?」
「ん? あぁ、なに。なにやら境目が
「は?」
「え!?」
さかいめ? さかいめって何?
みんなの顔に、さっきまでとは違う緊張が走った。それが分かったから、そう簡単に口を
で、でも、気になる。すっごく気になる。
目線を上げてジィッと綾芽を見つめると、綾芽は目を
そんな私と綾芽を見て、ついといった感じで帝様が笑いを吹き
良いことなんだろうけど……綾芽のせいで私も一緒に笑われた件についてちょっと物申したい。
けしからん。実にけしからんよ、これは。
「ハハッ。何やら楽しそうなことをやっているなぁ。我もいれておくれ」
「あそんでるんじゃないからだめでしゅ。……かんだだけ。かんだだけだからっ! そんなかおでみないでっ! くださいっ!」
神様がこちらに向けた顔は、さながら初孫がたどたどしい赤ちゃん言葉で話すのを見ているお爺ちゃん、だった。ちょっと
「もう! さかいめってなんですか!?」
こんなんで緊張感がほぐれるというならば、教えてもらおうじゃああるまいかっ!
遠慮? なにそれ、美味しくないならバイバイだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます