5
イテテと打った
いつのまにか豆を放り、
どうやら全ての
「かいとさーん。かおるくんがはやいっておかんむりですよー」
「うりゃあ! おし、次! ……なんか言ったか、チビ」
聞こえていなかったようで、早々に次の餅をつきあげていた。
そりゃああんな大きな声で掛け声かけてたら聞こえないだろうな。
「かいとー! かおるくんがはやいってー!」
「……ったく、薫のやつ、俺をなんだと思ってんだよ」
仕方ないよ、それが薫くんだもん。
手を止めた海斗さんが、肩にかけていた手ぬぐいで
「確かに結構なスピードですから、
「うん。かおるくん、あやめにおこって、あやめがかいとにいえって」
「あいつ! ほんっと!」
ドサッと
「海斗」
「あ゛?」
「あ゛ぁ?」
「あ、あぁ、夏生さんか。なんだ?」
あぁ、お馬鹿。
いくら不機嫌だからといって、夏生さんを睨みつけるとは何事か。
夏生さんに
夏生さんはフンと鼻を鳴らし、手に持っていた書状を海斗さんに突きつける。
海斗さんはその書状を受け取り、パサリと開いた。目が右から左へと動くにつれ、顔がどんどん怖いものに変わっていく。
「かいとー?」
「……そうだ!」
すると、何を察知したのか、夏生さんと巳鶴さんが顔をしかめた。
「海斗。お前、ロクでもねぇこと考えてんじゃねーだろーな」
「その子を巻き込むなんてこと、許しませんよ」
両方から責め立てられ、海斗さんはウッと声を上げた。
ダメだよ。そんなんじゃ。
その通りですって言ってるようなものじゃん。
「なぁ雅ぃ。お前は手伝ってくれるよな?」
「ん?」
「海斗っ!」
「なぁ雅ぃ。さっきのすっげー痛かったけどよ、手伝ってくれたら水に流してやるからさぁ」
「んー」
その件を持ち出されると弱いなぁ。
不可抗力とはいえ、やっちゃった私は立派な加害者だ。
「頼むっ! このとーりだっ!」
「んー」
くるっと体の向きを変え、深々と
ここまで来ると怒っていた夏生さんと巳鶴さんも何も言わない。
「わかった。いーよ」
「おっし! 神様ありがとうございますっ! ……ってお前もそうだったわ」
海斗さんは天に向かって
大丈夫。私もたまに忘れるから。
「なにすればいいの?」
「ん? なーに。お前はいつもみたいにニコニコしてりゃいい」
「そうなの?」
なーんだ。簡単じゃん。私、いつも笑顔よ。
「……バレた時は知らねぇからな」
「あっ。そんな
「ほー。よく言うぜ。俺が可愛いと思うのはきちんと真面目に働くヤツのことだ。そんなに言うなら年明けの書類整理、山ほど手伝ってくれんだろうな?」
「いやー。それとこれとは話が別なような」
「ふざけんな!」
「いてっ!」
海斗さんは夏生さんから
そんなに毎回ふざけるからその度毎回怒られるのに。
学習しないヤツは嫌いだって、前に夏生さん、言ってたよ。
「綾芽さんもそうですが、なにより御父上に話が行った時は、貴方、
「だぁいじょうぶだって! そん時は雅が取りなしてくれるもんなぁ?」
「ん?」
「なぁ?」
「う、うん」
海斗さんの笑顔の圧力が逆に怖い。
……そんなアノ人に祟られるようなことなの?
私、早まっちゃったかなぁ?
その後、夏生さんと巳鶴さんから、契約書関係はよく読むように、人の話は最後まで内容を
ようするに、私、早まっちゃった、と?
そういうことですか。そういうことですね。……反省。
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