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 いそいそと持ってきていたデジカメを起動させる。


 そうだ。ここも撮っておかなきゃ。



「あら、デジカメ?」

「あい。おじーちゃんにかってもらったの。たんじょーびにって」

「え!?」



 瑠衣さんの素っ頓狂な声がお店の中に響いた。


 身を乗り出してきた瑠衣さんを黒木さんが信じられないものを見る目で見ている。



「誕生日、聞いてなかったんですか?」

「だって!! あの小生意気な弟弟子がケーキを作ってるなんて聞いてないもの!」

「かおるおにーちゃまもしらなかったよ? わたしもわすれちゃってた」

「わすれちゃってたって……いつだったの?」

「じゅーがつさんじゅーいちにち」

「……十月三十一日って言ったら……雅ちゃんが面白いイベントを作ってた日じゃない!! どーして大切なことを忘れちゃうの!?」

「えへへ」



 だって、毎年お母さんが寂しい顔するんだもん。


 だったら、ハロウィンっていう魅力的な行事に意識持ってかれるよね?


 神社だから大々的にはやれなかったけど。



「もー。いいわ。旧暦よ旧暦。旧暦でお祝いしましょ」

「でも、あやめたちいない」

「あー……そうだったわね。じゃあ、無事に皆が帰ってきた時に慰労会も兼ねて雅ちゃんの誕生日会しましょ。これならいいでしょ? はい、決定」

「あ、ありがとーごじゃます」



 イッタ! 噛んだ!! 完全に噛んだ!!



 ……あ、相変わらずパワフルですね。


 ほぼ瑠衣さんの独断で決まったけれど、せめて慰労会というならお料理を準備する人達には言わなきゃ駄目じゃなかろうか。


 薫君とか桐生さんとか。


 ……また姉弟弟子喧嘩が勃発しそうだ。



「さ、それはいいとして、写真よ写真」

「あい」



 おっと、いけない。


 そうだった、そうだった。



「これがおかーさんよ」

「わっ!! ホント!? 一児の母には見えないわ」

「んで、こっちがおばーちゃん」

「……おばあさまのお歳は?」

「ろくじゅー、に?」

「ろくっ!?」

「よんかもしれない」

「十の位の間違いじゃなければここまできたら大差ないわよ! ……ねぇ、雅ちゃん」

「あい」

「お二人にどうやったらその美貌を保てるか聞いてくれない? 新作ができたら毎回ご招待することを約束するわ」

「いいよー!」



 二人が美容を気にして何かしてる所、見たことないけど。


 まぁ、聞くだけ聞いてみよう。


 まだ見ぬ新作甘味ちゃんのために!



 でも、瑠衣さんには必要ないと思うけどなぁ。



「るいおねーちゃま、きにしなくっても、とってもきれいよ? ね? くろきさん」

「え?」

「……」



 ……あ! 今のなし!!


 違うの!! もっとこう! 考えてたのに!!


 黒木さんが目の前にいるからぁ!



 内心慌てる私の心をよそに、黒木さんは仄かに口元を上げた。



「えぇ、そうですね。綺麗だと思いますよ」

「なっ、に、言ってんのよ!!」



 瑠衣さんが頬を真っ赤に染めてバタバタとバックヤードに……あれは逃げましたね。


 黒木さんもやれやれと肩を竦めて後を追っていった。



 一瞬……ほんの一瞬黒木さんが見たことない顔してたけど。


 け、結果オーラ、イ?



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