3
持ってきていたデジカメをいそいそと起動させる。
そうだ。ここも撮っておかなきゃ。
「あら、デジカメ?」
「あい。おじーちゃんにかってもらったの。たんじょーびにって」
「え!?」
瑠衣さんの素っ頓狂な声がお店の中に響いた。
身を乗り出してきた瑠衣さんを、黒木さんが信じられないものを見る目で見ている。
「誕生日、聞いてなかったんですか?」
「だって! あの小生意気な弟弟子がケーキを作ってるなんて聞いてないもの!」
「かおるおにーちゃまもしらなかったよ? わたしもわすれちゃってた」
「忘れちゃってたって……いつだったの?」
「じゅーがつさんじゅーいちにち」
「……十月三十一日って言ったら……雅ちゃんが面白いイベントを作って実行してた日じゃない! どーしてそんな大切な日だってことを忘れちゃってたの!?」
「えへへ」
だって、お母さんが毎年寂しい顔するんだもん。
だったら、ハロウィンっていう魅力的な行事に意識持ってかれるよね? 神社だから大々的にはやれなかったけど。
「もー。いいわ。旧暦よ旧暦。旧暦でお祝いしましょ」
「でも、あやめたちいない」
「あー……そうだったわね。じゃあ、無事に皆が帰ってきた時に慰労会も兼ねて雅ちゃんの誕生日会しましょ。これならいいでしょ? はい、決定」
「あ、ありがとーごじゃます」
イッタ! 噛んだ! 完全に噛んだ!
……あ、相変わらずパワフルですね。
ほぼ瑠衣さんの独断で決まったけれど、慰労会というのなら、せめてお料理を準備する人達には言わなきゃ駄目じゃなかろうか。薫君とか桐生さんとか。
……また姉弟弟子喧嘩が
「さ、それはいいとして、写真よ写真」
「あい」
おっと、いけない。
そうだった、そうだった。
「これがおかーさん」
「えっ! ホント!? 子供がいるような歳には見えないんだけど」
「んで、こっちがおばーちゃん」
「……おばあさまのお歳は?」
「ろくじゅー、に?」
「ろくっ!?」
「よんかもしれない」
「十の位の間違いじゃなければここまできたら大差ないわよ! ……ねぇ、雅ちゃん」
「あい」
「お二人にどうやったらその美貌を保てるか聞いといてくれない? 新作ができたら毎回ご招待することを約束するわ」
「いいよー!」
二人が美容を気にして何かしてる所、見たことないけど。まぁ、聞くだけ聞いてみよう。まだ見ぬ新作甘味ちゃんのために!
でも、瑠衣さんには必要ないと思うけどなぁ。
「るいおねーちゃま、きにしなくっても、とってもきれいよ? ね? くろきさん」
「え?」
「……」
……あ! 今のなし!
違うの! もっとこう! 考えてたのに!
黒木さんが目の前にいるからぁ!
内心慌てる私の心をよそに、黒木さんは
「えぇ、そうですね。綺麗だと思いますよ」
「なっ、に、言ってんのよ!」
瑠衣さんが頬を真っ赤に染め、バタバタとバックヤードに……あれは逃げましたね。
黒木さんもやれやれと肩を竦めて後を追っていった。
一瞬、ほんの一瞬、黒木さんが見たことない顔してたけど。
け、結果オーラ、イ?
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