5
「おにーちゃまたち、そこにせいざしてください」
「え?」
「せいざ!」
「う、うん」
「するから、落ち着いて」
正座しなおした茜さんのお膝から降りて、私は二人の正面に座った。
腕組みタイプの夏生さんではなくて、手を足の上に揃えるタイプの巳鶴さんスタイルでいこうかと思います。
「ふたりとも、けんかはだめです」
「「……」」
「ごめんなさいって、このさきずっといえなくなったらどーするの?」
「「……」」
「きょーだいげんかはそのいっしゅんだけにしないと、こうかいするときがいつかくるよ?」
「「……」」
それは他でもない彼ら自身が一番分かっていることだと思う。
普段仲が良い二人でも、一度ボタンをかけ間違うと、それをかけ直すのはなかなか難しい。その時その時は
だから、私の目が黒いうちは喧嘩なんかさせません!
「……茜」
「……蒼」
二人がお互いの名前を呼んだのは同時だった。
「「ごめん」」
さすが双子。見事なシンクロ率だ。
「ふたりとも、けんかはぜったいダメですよ?」
「うん。頑張るよ」
「小っちゃい君にこんなに言われたら、ね」
「やくそくです」
指切りげんまん、ウソついたら針千本のーます!
……でも、実際針千本用意するの難しいから、綾芽と夏生さんと巳鶴さんのお説教コースでいきましょう。
そう言ったら、蒼さんも茜さんも実に嫌そうに顔を歪めた。
部屋に戻ると、二人が仲直りしたことを皆に告げた。
「ったく、チビになに説教されてんだか。逆じゃねーか」
「まぁ、よいではないか。兄弟喧嘩というのも相手がおらねばできぬものよ」
「……はぁ。陛下はガキどもに甘すぎるんですよ」
「はっはっはっ」
夏生さん、溜息ばっかりついてると幸せ逃げちゃうよ? この間だって、机の角に小指ぶつけてたでしょ。
……あ、あれは私が楽しみにしてたプリンを食べられたのの報復だった。ぶつけちまえって思ったら、本当にぶつけちゃうんだもんなぁ。
「兄弟喧嘩も良いが、仲直りも速やかにすることだ。でなくばいつか必ず後悔するぞ?」
「……陛下」
ん? 私と同じこと言ってる。
それに、帝様も橘さんもどこか寂しそう。
「みかどさま」
「ん? どうした? 腹が減ったか?」
「おなかもすいたけど……みかどさまもだれかとけんかしちゃったの?」
「……だいぶ昔に、一度だけなぁ」
「なかなおりしてないの?」
「あぁ、できなかった。周りがな、させてくれなかったのだ」
「ひどい! そのひとたちつれてきて! ボッコボコにしてあげる!」
「これ。女の子がそんなことを言うものではないぞ?」
「だってー」
私、その人達、大っ嫌いだもの。
帝様の笑顔を曇らすヤツは絶対に赦せない!
「海斗さん? 貴方ですか? この子にこんな言葉教えたのは」
「俺!? ひでぇな、橘さんよ。俺じゃねー……と、思う」
「自信ないんですか?」
「なんだよ、茜。だってよー」
「雅ちゃん、駄目だよ? 海斗さんの真似しちゃ」
「あい。しません」
「あ、おい! 蒼! てめぇ、その言い方だとコイツが俺の真似してたって決めつけてるだろ!」
「だーっ! うるせぇっ!」
夏生さんが最終的にキレて、結局この話はうやむやのままに終わってしまった。
でもね、私、忘れないからね!?
女の恨みは恐ろしいってこと、知らしめてやるんだからね!?
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