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◆ ◆ ◆ ◆



 まったく。陛下にもあの子にも困ったものです。

 桐生さんや薫さん達正規の料理人が焼いた芋ならまだしも、どこの誰か知れない者の売っているものを食べたいだなんて。


 ……きっぱり断れない私も私ですね。


 “兄上を頼みます。橘さん”

 “はい。この命がある限り、必ずお傍でお支えいたします”


 ……あの時、あの御方とも約束したというのに。



「すみません。焼き芋を三つください」

「はいよ。兄ちゃん、好きなの選びな!」

「ちょっと!」



 肩を掴まれ、屋台車の屋根の下に引きずり込まれた。


 屋台車の荷台には、蒸かし機と、焼き芋が銀紙の上にいくつか既に準備されている。



「さぁさぁ、どれにする? どれもいいものばかりだよ?」

「分かりましたから、押さないでください」

「あ、兄ちゃん。これなんかどうだい?」



 屋台の男が指さす方を見ると、芋が並べられている隙間に何やら書きつけられた紙が貼ってあるのが見えた。


 その紙の周りにある芋を男がどかしていくと、その紙に書かれている文字が明らかになっていく。


 ……こ、れは。



「この銀紙の上のものを頂けますか? そのまま包んでいただいて構いません」

「はいよ。今日はこれで終いにしようと思ってたから、サービスだ。お代はいらねぇよ。さっさと東にある家に帰らねぇと、怖ぇ家のもんにどやされちまうからな」

「そうですか。それでは、ありがとうございました」

「さっきの可愛い声で叫んでたチビちゃんにもよろしくな」

「分かりました。また近くまで来たら寄ってください」

「おぅ。じゃあ、まいど!」



 男は車に乗り込み、すぐそこの曲がり角を曲がって行った。


 これに書いてあることが本当なら、本格的に動かねばならないようですね。陛下や凛さんにもお知らせしなければ。


 ……外にも内にも敵ばかり。

 陛下に安寧の日々をお迎えいただくのは一体いつになるのやら。


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