羨ましきかな兄弟愛
1
◇ ◇ ◇ ◇
慣れない所で眠れない……なんてことはなく、ぐっすりスヤスヤ眠り。起きたら薫くんのお師匠さんである桐生さんの美味しいご飯。控え目に言って最高です。
「いい食べっぷりとはこのことだな」
「まだたべれゆよ?」
「口の中に入れてる時は喋るな」
「あい」
桐生さんがカウンターに肘をつき、こっちを見てくる。
東では私専用の特等席ならぬ特別椅子が作られてたけど、帝様の思いつきで突然やってくることになった南にその椅子はない。必然的にお部屋で食事をとることになると思いきや、そんなことはなく。
「……あー」
「……」
贅沢にも、南のNo.2……凛さんのお膝が私の椅子だ。
「ちぇー。俺達が全部お世話するって決めてたのに」
「蒼、なんであの時グー出すんだよー」
「そんなこと言ったって、茜だってグー出してただろ?」
「蒼がグー出しそうな顔してたからぁー」
「は? 俺のせいって言いたいのか?」
「……」
「……」
おう? なんか向かいに座る蒼さんと茜さんから険悪ムード漂ってきてない?
「けんかはダメよ?」
「……喧嘩なんかしてないよ?」
「うん、大丈夫。心配いらないからね」
そうは言っても、なんだかギクシャクしてるのが丸分かりなんですけど。
そりゃあ、二人で勝つためには二人とも同じ出し方をしなくちゃいけないんだろうけど。どっちかが勝てばそれで良かったんじゃないのかなぁ?
南のお屋敷滞在中の私の部屋である凛さんのお部屋で、私と凛さん、帝様と橘さんが集まって食後のお茶を飲みながら寛ぐことになった。
さてはて。一体どうしたものか。
蒼さんと茜さんの二人の兄弟喧嘩は単なる口喧嘩では終わらなかった。
桐生さん達は二人のことは放っておけって言うけど……ギクシャクしてるのを見るのは何か嫌だ。
「いーしやーきぃーもー」
……うーん困った困った。
「おいもー」
どうしようかな?
「おいもはぁーいかがですかぁ?」
えぇい、気が散る!
障子をスパーンと勢いよく開け
「おじちゃま! ひとつください!」
……橘さん、えーって顔しないでよ。
美味しいでしょ? お芋。
「こら、お待ちなさい」
「たちばなしゃんもたべる?」
「いえ、私は……あっ、こらっ!」
お財布はどこ!? 早く行かなきゃ、焼き芋売りのおじちゃん行っちゃう!
「焼き芋とな」
「おいしぃーよ」
「橘。あれを」
「いけません。何が入っているか分からないものを召し上がるなど」
「芋を焼いているだけであろう? 食べてみたい」
「たべたいなぁ」
帝様と私の両方向からジッと見つめられる橘さん。数秒後、深い溜息をつき、部屋から出て行った。
私と帝様。もちろん、ニッコニコのご満悦です。
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