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◆ ◆ ◆ ◆

 


「……」

「……」

「……」

「……?」



 ジーッと見つめられること、数十秒。

 首をカクンと傾げると、向こうも合わせ鏡のように同じく首を傾げる。


 ……か、可愛い!


 茜から連絡が来た時は、夏生さんが許可を出すはずないって思ってたけど。勅命が下ったのなら仕方ないわよねぇ。


 んっふっふっ。



「……おねぇちゃま? ……おにいちゃま?」

「……」



 誰にやってもらったのか、クルクルお団子頭が左右に揺れている。


 これはもう、あれよね!?



「あっ」

「……」



 確か、部屋にまだ端切れが残ってたはず。



「……おこっちゃった?」

「大丈夫大丈夫。あの人、いつもあぁだから」

「きっと何か思うところでもあったんだよ」



 最近鳳さんが忙しくて、なかなか例の場所へ一緒に行けないから寂しかったのよねぇ。


 でもまぁ、いいわ。


 そうだ!

 この際だから溜めてたやつも全部使っちゃおうかしら。


 ……うーん、腕がなるわぁ!







「そこの回廊をりんさんが無表情で鼻歌混じりにスキップしてたんだが」

「おい、誰かあの人に人間には表情ってもんがあることをいい加減教えてこいよ」

「とっくに教えとるわ」

「なんで変わんねぇんだよ」

「……凛さんだから、だろ」

「これでも一人十回一日ノルマこなしとーけんね。ばってん変わらんとはもう仕方なか」

「無駄骨じゃねぇか」



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