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□ □ □ □



 あわわわわ。


 呑気のんきに気絶なんかしちゃってるうちに、なんだかすごい所に来ちゃったみたい。


 柔らかい布団に転がされていた私が起きてすぐ目にしたのは、美人なオネエさん?のドアップのお顔。

 最初、女の人みたいだったから間違えかけたけど、どさくさ紛れに触ってみたら、お胸がなかったから分かった。あっても私、女の子だからセーフだもーん。しかも、添い寝つき。


 そのオネエさんに抱っこされ、私は今、大広間で豪勢な歓待かんたいを受けている。



「さぁさ。たーんとお食べ」

「ふおぉぉー!」



 うむ、よきに計らってくれたまえ。


 ……じゃなくてっ!



「しらないひとからたべものもらっちゃダメなのよ」

「あら、そうなの? なら大丈夫ね。私、あなたのこと、これっくらいの時から知ってるもの」



 いやいやいや、嘘だね! だってそんな豆粒みたいなの、赤ちゃんだってそれの何十倍……かどうかは分かんないけど、あるもんね!



「わたしはしらないからダメ」

「まぁ! 母親に似て頭固いのねぇ。もっと柔軟に生きなきゃ」



 柔軟に生きてる結果がアノ人なら、私は頭が固くていい。


 それに、だ。

 アノ人もお母さんも知っていて、人間に化けられる大蛇に主人と呼ばれるこの人はやっぱり……。



「せーっかく私好みの外見になるまで待ったっていうのに、なーんでまたこんなちみっちゃい姿になっちゃったんだか」

「やーめーてー」



 後ろから両頬を指でプニプニ。


 そして、やっぱり例の神様か! 幼女趣味は神様的にアウトです! 

 だから、即刻お屋敷に戻してー! ……ください。


 うーん。いよいよもってアノ人くらいしか助けに来れそうな人がいなくなったわけですが。困ったものです。私のお腹の虫ちゃんは!


 グギュルルゥウォォン



「……今の音って」

「ちがうよ? わたしじゃないよ?」



 目の前にえさをぶら下げられてる気分だけど、食べちゃダメ。


 ヨモツヘグイって言う恐ろしい例もあることだしね。

 食べたら最後、ここから二度と出られませんなんてオチ、絶対やだ!



「遠慮することないのよ? ほら、美味しそうでしょ?」

「……いらないっ」

「どうして? ほら、毒なんて入ってないわよぅ?」

「……い、いらないよっ!」

「そぉお? すっごく美味しいのに。ほら、あー……んー! 美味しいわぁ」



 オネエさんはたくさんある料理の中で手近にある魚の煮付けを自分の口に運んで見せてくる。


 む、むきーっ! いいもんね! 薫くんのご飯の方が絶対美味しいから!



「なかなか強情ね。今の姿じゃ食指しょくしが動かないんだけど、このまま逃げ切られるのもしゃくなのよねぇ」

「オネエさん、わたし、おんなのこよ? おとこのこじゃないの。だからバイバイしたいな」

「あら、なんで? 私、こんななりと口調してるけど、好きなのは女の子よ? それに、あなたは私のものって、あなたが生まれた時から決まってるの」

「き、きまってない……と、おもいます。だって、わたしはわたしのものだもの」


「……母娘おやこそろって神に意見するなんて、いい度胸だこと」



 ゾワッと、背筋を冷たいものがつたっていく。


 オネエさんが先程までの陽気で明るい雰囲気とは真逆のソレをかもし出し始め、私は無意識のうちに両腕を抱えていた。



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