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□ □ □ □



 ここはどこだろう?


 目覚めた私は座敷牢ざしきろうみたいなところに入れられていた。幸いにも手足は縛られてない。


 ……怖くない。怖くなんかないよ?


 立ち上がって鉄格子てつごうしつかんでらしてみたけれど、当然ビクともしない。



「……」



 選択肢せんたくしその一。

 みんなが助けに来てくれるまで大人しく待つ。


 そもそも私にすらここがどこか分からないから却下きゃっか


 選択肢その二。

 自力でここから出る。

 

 後で色んな方面からすっごく怒られるかもしれないから、とりあえず保留。


 選択肢その三。

 アノ人を呼ぶ。


 一番選びたくない選択肢だけど、背に腹はかえられない。でもやっぱり保留。


 どうしよう。選択肢が不穏か絶対イヤなのしか残ってない。


 私がウンウンうなって考えていると、そばにあった階段を誰かが下りてくる音がした。



「あら、本当に捕まえられたのね。私、何故かあのお屋敷に入れなくなってしまったから、どうしようかと思ってしまったわ」

「……せりしゃん」



 現れたのは自称・綾芽の婚約者サマだった。



「最近、綾芽さんがちっとも私と会ってくださらなくなったのは、貴女がいたからなのね。ずるいわ? 綾芽さんを一人占めだなんて。だから、私、考えたのよ。貴女がここにいればいいじゃないって」

「あやめはこないよ?」

「いいえ。来るわ?」



 何かしらの根拠があるのか、瀬里さんは自信満々に応えた。


 私は綾芽を呼び出すための人質ってわけですか。むぅ。

 綾芽、来るな来るな来るなー。


 届くか分からない念を必死に送ってみた。


 自称・私のパパさんよ。たぶん聞こえてるだろうし、居場所も知ってると思うけど、綾芽には言わないで! そんでもって助けてください! お願いします!

 


「お嬢様、綾芽殿が参られました」

「あら! うふふ。やっぱり来てくださったのね」



 ……アノ人に頼ろうとした私が馬鹿だった。


 階段の上から声をかけられ、瀬里さんは頬に手を当てながら上へ戻って行った。代わりに、私をここまで連れてきてくれおったおじさんが下りてくる。



「……おじしゃん、きらいよ」

「うん。ごめんなぁ?」

「あやまったってゆるしません! おなかすいたの。おかし、かえして」



 気絶する前まで持っていたお菓子入りの袋がなくなっている。


 あれは! 私の! ものだ!

 正当なる返還要求に応えてもらうことを所望しょもうする!



「あー、それなんだけどなぁ」

「なに? たべたか!? たべたのか!?」



 先程よりも鬼気せまる私の様子に、おじさんは若干引いている。



「い、いや、食べてなんかいないよ。ちょっとこれからまた移動しなくちゃならないんだ。だから、その後に渡すよ」

「いどう? あやめのとこいくの?」

「……いや。俺の主人のところにさ」

「しゅじん? せりしゃん?」

「いや。君のお父上もよく知ってる御方のところだよ」

「えー?」



 お母さん、だといいなぁ。


 と、思ったけど、それはないってことはすぐに分かった。



「へ、へへへ、へびぃぃぃぃっ!」



 お母さんも私も大の蛇嫌い。

 おじさんの姿が大きな蛇に変わった時、これはないなと理解。

 鉄格子を上手くすり抜け、身体に巻きつかれた時にはもう。全身が鳥肌で覆われ、きむしりたくなってくる。


 とりあえず、今回のことで学んだ教訓を一つ。


 良く知らない人からお菓子はもらいません! 同じく、知らない人外からもです!



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