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ふふふーん。
子瑛さん、子瑛さん。これ、私が作ったの。食べてみ食べてみ？
「どう？」
「好喫」
「りゅー、なんて？」
「おいしい」
「ムフフフー」
照れますなぁ！
太陽が沈み、空にはきらきら光るお星さまとこれまた見事なお月様が出ている。
始まってそんなに時間は経っていないというのに、もうそこらには酒瓶が転がっていた。
子瑛さんは十八歳とのことで、私と二人でオレンジジュースの瓶を仲良く分け合ってる。ちなみに、次はブドウジュースに移行予定です。
さて、ここで一つ問題がございます。
この東のお屋敷にはもう一人未成年がいることが発覚しておるのですが、一向にジュース組の仲間入りを果たそうといたしません。
むしろ、初っ端から日本酒飲み始めるというとんでもない所業を見せているではあーりませんか。
さっきからジュース組へ引き込もうと、おいでぇーおいでぇーと念じているのにも関わらず、そういったものを一切受け付けないと言わんばかりにシャットアウトされております。
「おさけはね、はたちになってからー」
「いやいやいや。そんなのありえねーから」
「元服してるんやから、大丈夫やろ。しかも薫、あぁ見えてザルやで？」
「ざる」
「いくらでも飲めるいうことや」
「……」
そういえばそうだった。
ここ、成人って元服の年だもんね。そりゃあ、もうお酒が飲めるはずだ。
ついつい向こうの世界と変わらないところが多すぎて、ここが向こうの常識と違うことを忘れがちになってしまう。
……ハロウィンその他諸々の外国行事がないって知った時並みにね！
あーれはここに来た時と同じくらいの衝撃だった。
いや、それは盛ったな。半分、いや、四分の三以上？ それくらいの衝撃か。
「……かーっ。仕事上がりの酒は最高だなっ！」
「おう！ ほら、どんどん飲め飲め！」
夏生さんのお許しで、本日は無礼講の飲み放題。おまけに黒木さんも来てるから、薫くんがそれはもう張り切っちゃって、つまみもすごく多種多様で豊富。
さて。
元の世界にも一年にたった一度だけ。未成年でも飲酒が
何を隠そうお正月。お
つまり、一日だけ、少しだけなら赦されると思う。
子瑛さんの膝から飛び降り、庭に敷いたゴザに座っているおじさん達の元へと駆け寄った。
おじさん達はしっかりと日本酒の瓶を抱き込んでいる。
「……ねぇー、おじちゃま」
「あ？ なんだ？」
「どうした？ チビ」
「それぇー、のんでみたいなぁ」
「は？ ……いやいやいや。さすがに、なぁ？」
「ダメだろ。俺達が綾芽さん達に殺されちまう」
「だいじょうぶよぉ。こわくないよぉー？ にんげんだもの」
「いや、人間だけどさ。違うんだよ」
「ちがわないよー？ じゃあ、ためしてみよ」
「どうやって」
「それ、ちょっとちょーだい？」
「……いやいやいや。それ、結局お前が飲んでみたいだけだろうが」
「……そんなことないよー？」
「おい、こっちを見ろ」
「チビ、お前、完全に目が泳いでんぞ」
そんなことないって、うん。
……飲ませてくれないなら、美味しい美味しい連呼しないでくれまいか。興味しか湧いてこないじゃんか。
「ちょー……あいたっ！」
いきなり頭をゴツンと叩かれ、上を向くと、夏生さんが拳固を構えたまま私を見下ろしていた。
「ガキは大人しく向こうでジュースだ」
「えー」
「なんだって？」
「……だって、ちょっとだけならだいじょうぶよぉ……ブッ」
「反抗する口はこの口か」
「ごめんひゃい」
あーあ。ここに至っては諦めるしかあるまい。
あ、ちょっと夏生さん、力強い。緩めて緩めて。
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