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 ふっふふ~ん。


 縁側で足をブラブラさせ、待つこと数十分。


 待ち人はまだ来ない。



「まだ来ないんやったら部屋の中で待っといてもえぇんちゃう?」

「ダーメ。いちばんにきづいておむかえするの」

「一番もなにも、門番が通さなあかんのやから、門番が一番やろ」

「おしごとのじゃまはダメ」

「……偉い偉い」



 綾芽はさっきまで隣で足を組んで座っていたけれど、とうとう縁側に寝っ転がってしまった。


 堪え性のない人だ。



 今日は待ちに待ったお月見の日。


 神様に晴れるようにお願いしてたら、ちゃんと晴れにしてくれた。


 ありがとう、天の神様!



「ふあぁ~っ」

「あやめ、ねちゃダメ」

「そうは言うても、こんな昼寝日和の日に縁側におって眠たくならん方がおかしいわ」

「もうすこしまって!」



 もうすぐ瑠衣さん来るから!



 今日は今から瑠衣さんとお月見のお団子作りです。


 私じゃ薫くんと瑠衣さんが険悪ムードになった時、ちゃんと止められるか不安だから一緒にいてもらわなきゃ。


 薫くん、今日すでに不機嫌だし。



 もうそろそろ来るはずなんだけどなぁ~?



「あ、車の音してるやん。来はったんやない?」

「ホント!?」



 綾芽がそう言ってから数分後、門に二人組の男女の姿が見えた。



「みやびちゃ~ん!」



 ホントだ!!


 しかも、瑠衣さんだけじゃなくて、あの店員のお兄さんもいる!



「ん? なんや、誰かと思えば黒木はんやないの」

「やぁ。今日は荷物持ち兼、運転手兼、雑用係として駆り出されてね」

「そらお疲れさん。ほな自分、ちょっと寝ますわ。もう来たからえぇやろ?」



 綾芽が起き上がり、軽く伸びをして私に問うた。



「かおるおにいちゃまとけんかになるからダメ」

「え~。瑠衣はん、喧嘩なんかしはらんて。なぁ? 黒木はん」

「そうだね。君の前で喧嘩なんて大人気ない真似するわけ、ないですよね?」

「……喧嘩なんて……いつもしてないわよ」



 瑠衣さん、声が小さくなってるよ。



 確かに瑠衣さんからしてみれば喧嘩はしてないかもしれないけど。


 あれは完全に薫くんを煽って、おちょくって、遊んでるもんね。



「黒木さん!!」



 綾芽を何とかして動かそうと試行錯誤していた時。


 バタバタと門の向こうから件の薫くんが走って入ってきた。



「どうしてここに!? 連絡してくれればいいのに! さ、上がってください。今、お茶出しますね?」



 見たことがないような笑みを浮かべ、薫くんは店員のお兄さん、黒木さんの手を引いた。


 さりげに持っていた荷物も半分受け取っている。



 薫くん、君は私の知っている薫くん?



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