10
□ □ □ □
ふっふふーん。
縁側で足をブラブラさせ、待つこと数十分。待ち人はまだ来ない。
「まだ来ないんやったら部屋の中で待っといてもえぇんちゃう?」
「ダーメ。いちばんにきづいておむかえするの」
「一番もなにも、門番が通さなあかんのやから、門番が一番やろ」
「おしごとのじゃまはダメ」
「……偉い偉い」
綾芽はさっきまで隣で足を組んで座っていたけれど、とうとう縁側に寝っ転がってしまった。
今日は待ちに待ったお月見の日。
神様に晴れるようにお願いしてたら、ちゃんと晴れにしてくれた。
ありがとう、天の神様!
「ふあぁーっ」
「あやめ、ねちゃダメ」
「そうは言うても、こんな昼寝
「もうすこしだけ! もうすこしだけ、まってて!」
もうすぐ瑠衣さん来るから!
私だけじゃ薫くんと瑠衣さんが険悪ムードになった時、ちゃんと止められるか不安だから、綾芽には絶対一緒にいてもらわなきゃ。薫くん、今日すでに不機嫌だし。
「あ、車の音してるやん。来はったんとちゃう?」
「ホント!?」
綾芽がそう言ってから数分後、門に二人組の男女の姿が見えた。
「みやびちゃーん!」
ホントだ!
しかも、瑠衣さんだけじゃなくて、あの店員のお兄さんもいる!
「ん? なんや。誰かと思えば、黒木さんやないの」
「やぁ。今日は荷物持ち兼、運転手兼、雑用係として
「そらお疲れさん。ほな自分、ちょっと寝ますわ。もう来たからえぇやろ?」
綾芽が起き上がり、軽く
「かおるおにいちゃまとけんかになるからダメ」
「えー。
「そうだね。君の前で喧嘩なんて大人気ない真似、するわけないですよね?」
「……喧嘩なんて……いつもしてないわよ」
瑠衣さん、声が小さくなってるよ。
確かに、瑠衣さんからしてみれば喧嘩なんてしてないのかもしれないけど。だって、あれは完全に薫くんを
「黒木さん!」
綾芽を何とかして動かそうと試行錯誤していた時。
バタバタと門の向こうから
「どうしてここに!? 連絡してくれればいいのに! さ、上がってください。今、お茶出しますね?」
見たことがないような笑みを浮かべ、薫くんは店員のお兄さん――黒木さんの腕を引いた。さりげに、黒木さんが持っていた荷物も半分受け取っている。
……薫くん。貴方は私の知ってる薫くん?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます