8



 夢の中は便利だ。


 だって、行ったことのない所にもいけちゃう。


 たとえば、ここ。


 どこなんだろう?



 霧が立ち込める中で、周りを見渡しても何もない、誰もいない。



 「みやびちゃーん」



 誰だろう? 声がする。


 聞いたことがあるような、ないような。


 懐かしいような、そうでないような。



 とりあえず、呼ばれているんだからそっちへ行ってみよう。



 「待て。アレの呼びかけに応えるな」

 「……どうしているの?」



 人の夢の中なのに、アノ人がいた。


 今までは黒髪黒眼と色だけみればどこにでもいそうな人?だったけど、今は銀に近い白髪に目なんか紅色だ。


 一体何に影響を受けたのだと言いたくなったけど、違った。


 こっちがいわゆる本性なんだ。



 「みやびちゃーん」



 まただ。


 霧の向こうから誰かが私を呼んでいる。



 そちらに足を向けようとすると、肩を掴んで止められた。



 「ここはそなたの夢の中のようでそうではない。ここは夢と現の境の場。アレは我が友がお前を探している声。前に言っていた友神のことだ。優姫が説得したくらいで聞き届けるような輩ではないと思っていた」

 「……なんてこった」

 「蛇神は執心深いからな。一度狙いをつければ想いを遂げるまで諦めん」

 「だれのせいだとおもってるの?」



 その間も呼ぶ声が聞こえてくる。



 「早く目を覚ませ。向こうで過ごしているうちはまだ目くらましになっている」



 ……私の恨み節を全く意に介せず、よくもまぁスルーしてくれたもんだ。



 まだまだ文句の一つも言い足らないと口を開くと、スッと両目を片手で覆われた。


 すると、私の意思に反して、みるみるうちに意識がここから遠ざかっていく。



 「良いな? あの声には応えるな」



 最後に聞こえてきた声に、あなたの声にもな、と思ったのは今の私にできる精一杯の反抗だった。



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