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 それから数日後、土方の部屋に斎藤と島田の姿があった。


 とうとう蛍の住む屋敷が判明したとの知らせを聞き、土方は逸る気持ちを抑えていた。



 「名をケイ。年は十七、八。武家の松本家に住んでいますが、その家の者ではないようです」


 「どこの藩の出だ?」


 「それが分からないのです。過去のことが一つも。京に来て、松本家に居候するようになってからしか誰も知らないと」



 島田の答えに土方は眉を曇らせた。


 あぐらを組んでその上に肘をつき、何事かを思案しているようだ。



 「……明日そこに行く」


 「副長直々にですか?」


 「あぁ」


 「私も行きますよ」



 廊下から声がしたかと思うと、挨拶なしに障子が開かれ、沖田が入ってきた。



 「……総司。何しでかす気だ」


 「土方さんだけだと、この前みたいになるだけですよ。土方さんがこの前みたいに平手打ちされようが殴られようが斬られようが構わないんですけど、むしろもっとして欲しいくらいなんですけど」


 「総司、てめぇ……」


 「近藤さんのためにはもっと強い奴を隊士にした方がいいし、私も稽古の時退屈しなくてすみますしね」


 「…………」



 自分が今、どんな顔をしているのかぐらい分かる。


 鬼の形相にもめげずに、沖田が飄々としているのを見て、土方は言葉すら出てこなくなっていた。


 大人気ない。


 そういう気持ちも働きだす。



 「土方さんこそ、連れてくる邪魔をしないで下さいね」


 「…………」



 気持ちを落ち着けようと手を伸ばした煙管がミシッと音を立てた。


 こうなると他の隊士、時には助勤格の幹部達すら恐怖を覚える。


 しかし、沖田だけは違った。



 「じゃあ、土方さん。出かけて来ます」


 「あ゛ぁ? どこ行くんだよ?」


 「どこでもいいじゃないですか」



 そう言うと、スパンと障子を閉め、沖田の足音は遠ざかって行く。


 はぁ、という大きな溜め息が部屋に充満した。



 「あいつ、昔っから俺ばっかり目の敵にしやがって」


 「副長、私もお供しましょうか?」


 「ん? ……あぁ、お前にはちぃっとやってもらいてぇことがある」



 斎藤に一言二言指示を出し、斎藤が頷いたのを見て満足そうに口の端を上げた。



 「何がなんでも入れてやらぁ」



 土方は不敵な笑みを見せ、プカリプカリと煙管から紫煙をふかした。



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