5
「土方さん、何やってるんですか? せっかく近藤さんが引き止めてたのに」
沖田が嫌な物を見る目で土方の方を見やった。
その目は、自らが敬愛する近藤を見るものとは程遠い。
近藤はそんな沖田をまぁまぁと宥め、土方に顔を向けた。
「歳、彼に平手打ちをかまされるような事をしたのか?」
「してねぇよ。会ったのは初めてだ」
「土方さんは初めてでも、向こうは知っていたかもしれませんね。手を出した女達の
「俺はそんな面倒な女にゃ、手ぇ出してねぇよ! 何なんだ、さっきから! 妙につっかかって来やがって」
「別に。事実かもしれないことを言ってるだけです」
「総司」
今度は斎藤に嗜められ、沖田はそっぽを向いた。
完全に土方に喧嘩を売っている。
近藤はそんな二人の間にあり、困ったように笑うのが常であった。
「ったくよ。おい、斎藤」
「はい」
気を取り直した土方は、煙管に入れた煙草に火をつけた。
名を呼ばれた斎藤は真面目な顔をさらに引き立て、土方の次の言葉を待った。
「次あいつを見つけたら、捕まえなくていい。後をつけて、家を探れ。島田もいいな?」
土方が上を向いて天井に声をかけると、天井板が外れ、ヌッと顔を出した島田がこくりと頷いた。
「分かりました。素性も洗いますか?」
「斎藤は家だけでいい。島田は両方頼む。道場破りするくれぇだ。腕は立つ。気ぃつけてかかれ」
「はい」
カタンと板が再びはまる音がして、島田の姿が消えた。
おそらく早速聞き込みに向かったのだろう。
仕事の早いことだ。
「私は? 何をすればいいんですか? 副長?」
「お前はいい。余計事態がややこしくなったら面倒だ」
「面倒にしてるのは土方さんじゃないですか」
「何だと、こら」
「歳、総司! 喧嘩はやめろ!!」
このような言い争いは日常茶飯事。
近藤には悪いが、斎藤もあわよくば今日中に家を見つけられるかもしれないと、土方の部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます