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 「土方さん、何やってるんですか? せっかく近藤さんが引き止めてたのに」



 沖田が嫌な物を見る目で土方の方を見やった。


 その目は、自らが敬愛する近藤を見るものとは程遠い。



 近藤はそんな沖田をまぁまぁと宥め、土方に顔を向けた。



 「歳、彼に平手打ちをかまされるような事をしたのか?」


 「してねぇよ。会ったのは初めてだ」


 「土方さんは初めてでも、向こうは知っていたかもしれませんね。手を出した女達の情夫いろとか」


 「俺はそんな面倒な女にゃ、手ぇ出してねぇよ! 何なんだ、さっきから! 妙につっかかって来やがって」


 「別に。事実かもしれないことを言ってるだけです」


 「総司」



 今度は斎藤に嗜められ、沖田はそっぽを向いた。


 完全に土方に喧嘩を売っている。


 近藤はそんな二人の間にあり、困ったように笑うのが常であった。



 「ったくよ。おい、斎藤」


 「はい」



 気を取り直した土方は、煙管に入れた煙草に火をつけた。


 名を呼ばれた斎藤は真面目な顔をさらに引き立て、土方の次の言葉を待った。 



 「次あいつを見つけたら、捕まえなくていい。後をつけて、家を探れ。島田もいいな?」



 土方が上を向いて天井に声をかけると、天井板が外れ、ヌッと顔を出した島田がこくりと頷いた。



 「分かりました。素性も洗いますか?」


 「斎藤は家だけでいい。島田は両方頼む。道場破りするくれぇだ。腕は立つ。気ぃつけてかかれ」


 「はい」



 カタンと板が再びはまる音がして、島田の姿が消えた。


 おそらく早速聞き込みに向かったのだろう。


 仕事の早いことだ。



 「私は? 何をすればいいんですか? 副長?」


 「お前はいい。余計事態がややこしくなったら面倒だ」


 「面倒にしてるのは土方さんじゃないですか」


 「何だと、こら」


 「歳、総司! 喧嘩はやめろ!!」



 このような言い争いは日常茶飯事。


 近藤には悪いが、斎藤もあわよくば今日中に家を見つけられるかもしれないと、土方の部屋を後にした。



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