ルイナ

 瞬間、ダングルは凛の雰囲気が変わった事が分かり、凛を止めるようとした。


「大丈夫よ。ダンさん」

「……お主」


 ダングルの雰囲気が尋常ではない警戒をしている事に二人が気が付き、ルイナはデイルに腕を引かれ、凛か離された。


「……凛の怒りが爆発したのね。正直、私が現れるのは凛の身体に負担になるからやめて欲しいのだけど?」

「……何をする気だ?」

「何もしないわよ?」


 ダングルの警戒の色が消えない。

 剣に手をかざし、いつでも抜刀するつもりのようだ。


「そのように強い殺気を出して何もしないとは思えんな」

「……分かるのね。アナタがいなければそこの人物を殺していたわね」

「お主……」


 ダングルの表情に怒りが見え、険しい顔になる。


「リ、リンちゃんなの?」


 凛から一番離れた場所にいるルイナが凛に向けて言葉をかけた。


「……今は違うわね。はっきりとそう言えるわ。凛は怒りで私を呼び出したのよ」

「リンちゃんじゃないのね……」

「えぇ。そうよ」


 凛が前に手をかざした。


 すると目に見えない何かが集まり、デイルに向けられた。


 デイルは状況を飲み込む事が出来ず、回避が遅れた。

 何かが自分に向かって飛んでくるとは感じたが、目を瞑るだけだった。


 そして、凛から出された何かはデイルに直撃した。


「……うぅ。ルイナ!?」


 と、思われた。


 だが、ルイナが身を挺してデイルを押し倒して回避した。


 だが、完全に避ける事は出来ずにルイナの肩に傷が出来ていた。


「ル、ルナさん!?」


 この場で一番動揺したのは凛だった。


 凛は傷つける人物を間違えた。


「リ、リンちゃん……」


 ルイナは肩に傷を負った状態で、凛に近づいた。


 凛はルイナを拒絶するように後ろに下がるが、直ぐにドアあり動けなくなる。


 ルイナは凛に近づき、そして抱きしめた。


「大丈夫よ。大丈夫なのよ。リンちゃん。だから、戻って来て……」

「ルナさん。私……。私は……」

「アナタはリンちゃんよ。大丈夫。アナタは悪くないわ」

「あ、あぁぁ、ぁあぁぁ……」


 凛はルイナをゆっくりと抱きしめた。


「ご、ごめん……。ごめんなさい。ルナさん」

「良いのよ。これくらい……。良かった、正気に戻って……」


 ルイナは凛に笑顔を見せると気を失った。


「ルイナ!?」


 倒れる彼女を抱きかかえるダングル。

 直ぐにルイナの元に近づくデイル。


 凛はその光景をただ、見る事しか出来なかった。

 ルイナに傷を付けは人物は自分だ。


 その事が頭を廻り、その場を逃げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る