第1章
城へ
日本の病室で息を引き取った少女、花々 凛は異世界に転生をした。
訳も分からずに転生した凛は魔法を行使する事が出来るようになっており、日本では病弱だった彼女の身体は嘘のように健康で髪も腰まであり、とても綺麗な黒髪をなびかせていた。
現在はダングルとルイナの家に居候する事になったのである。
「なぜ、お前もついてくるんじゃ。ルイナよ」
「リンちゃんが心配だからよ」
「ありがとう! ルナさん!!」
凛とルイナはかなり仲が良くなり、若干の疎外感を受けるダングルであるが、凛にとってそれが良いのだろう。と、思いルイナの同行を許可するのであった。
決して剣の売却で脅された訳ではない。……おそらく。
こうして、三人は城に向かうのであった。
「……城に行って何をするの? ダンさん」
「ん? いろいろじゃな」
「ざっくりね……」
「……アナタ。それじゃリンちゃんが不安になる訳よ」
「う、うむ~」
ダングルがどんどん小さくなり始めると、ダングルの代わりにルイナが話し始める。
「リンちゃん。あの大きい建物が城よ」
「……おぉ。……城ね」
遠くに見える建物はそのまま城だった。
詳しい建築の知識がない凛は異世界にある城と考え、日本にあるネズミが支配する夢の世界のファンタジーなお城や魔法を使う者達が勉強をする魔法学校のような建物を想像していたが、見えた建物は若干のファンタジーな部分もあるが、日本のザ・城!! だった。
一言で言うならば、姫路城と魔法学校を足して二で割ったような建造物だ。
「……異世界が急に親しく思えてきたわ」
ぼそっと呟く凛であった。
「えっとね。この街に住む場合は城に行かないとダメなのよ」
「どうして?」
「そういう決まりだから。としか答えるしかないわね」
法律のようなものかな?
と、思う凛。
「それでね。城ではこの街に住むための手続きと個人の許可書を発行してもらうの」
「へ~。役所みたいな場所なのね」
「ヤクショはよく分からないけど、おそらくそうね」
二人の後ろでダングルが心配しながら話を聞いていた。
「多分だけど、この人は凛ちゃんの事を想ってだと思うんだけど、精密な検査もしようと思ってるみたいね」
「うむ」
「精密な検査?」
「そうよ。その人の強さなどが分かる検査よ」
「あ、そう言えばそんな事をダンさんが言ってたかも?」
後ろでため息をつくダングル。
それを見て少し凛が笑顔を見せると苦笑いを返すのだった。
「ステータスって確かお偉い方々は言ってたかしら。後は身体検査かしらね」
「なるほど。ダンさんは私を売る気はなかったのね」
「する訳なかろうが……」
「あはははは。冗談よ!」
「ふふふ」
まったく思ってなかったと言えば嘘になるが、昨日の話を聞いた凛はダングル夫婦に絶大な信頼を置いていた。
でなければこんな軽口は言えないだろう。
それを分かっているダングルは呆れ、凛はダングルの反応を見て楽しそうに笑い、ルイナは凛の笑顔を見て笑顔になるのであった。
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